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ビヘイビアで簡単Spiceシミュレーション①

みなさんこんにちは。電源課の真野です。

今回は、回路シミュレーションで簡易的に傾向をつかみたいときに利用できる“ビヘイビアモデル”についてお話しさせていただきます。

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Spiceシミュレーションはメーカーが提供するモデルや、実測して抽出したモデルを使用することが普通ですが、規模が大きくなりすぎて解析速度が遅かったり、エラーで動作しなかったり… ということが発生し、傾向だけ確認したいだけなのに、動かないためにメーカーモデルの中まで調べて…
と想定以上に時間がかかってしまうことはないでしょうか。

そこで、設計の初期段階ではデバイスの単純な振舞いだけを模したビヘイビアモデルを作って検証することがよくあります。
(実はメーカーモデルも大半ビヘイビアで作られていますが、その中身は意外と複雑です。)

ここでは、【図1】のシンプルなインバータのFETをドライブする素子をビヘイビアで作ってみようと思います。具体的には、パワエレではおなじみのPWM信号を、一つのビヘイビア電圧源で生成させることができるので、順を追ってご説明いたします。

使用するSpiceは、入手しやすいAnalog Devices 社のLTspiceにしました。

 

 

【図1】インバータ回路

 

(1)PWM信号をつくる

まず、変調方式としてPWMが指定されていますので、その信号を生成します。

PWMはパルス幅変調(pulse width modulation)のことで、周期が一定で、その1周期中のパルスの幅(デューティー)が変化する方式です。

変調したい元の信号(被変調信号)と、それを周期ごとに区切る信号(キャリア信号)との大小関係を比較して【図2】のように信号を生成します。

キャリア信号には変化が直線的な鋸歯状波や三角波が選ばれます。

緑色の被変調信号を黒色のキャリア信号で変調したものが赤色の波形で、最終的に、FETのハイサイドとローサイドで反対の動作をさせるために、後述のデッドタイムを付加して位相を反転させた2種類の信号を作ります。

 

 

【図2】PWM信号生成の一連の流れ

 

(1-1)被変調信号の作成

AC出力になる50Hzサイン波の被変調信号をMODと命名して、Spiceの独立電圧源V(Independent Voltage Source)のSIN波設定で作ります。
信号の大きさは変調度初期値が80%なので(キャリア信号の波高値を1として)初期値として0.8Vに設定します。

記述は下記のようになります。

ここでは周波数(FREQ)と、キャリアに対する変調度(MD)を.paramコマンドで変更できるようにしています。
また、出力のノード名をMODとしています。

 

 

【図3】被変調信号(サイン波 50Hz)のモデル

 

(1―2)キャリア信号の作成

キャリア信号として波高値±1V、周波数100 kHzの三角波をCARと命名して、独立電圧源V(Independent Voltage Source)のPULSE設定で作ります。

記述は下記のようになります。

ここではキャリア周波数(CF)を.paramコマンドで変更できるようにしています。
また、出力ノード名をCARとしています。

 

 

【図4】キャリア信号(三角波100kHz)のモデル

 

【図4】のモデルでは頭頂部に平らな部分が発生しますが、気になる方は下記のようにPWL設定での記述もできます。
ただ、この記述はLTspice独自のものになります。

V_CAR CAR 0 PWL Repeat forever (0 0 {(1/CF)/4} 1 {(1/CF)*(3/4)} -1 {(1/CF)} 0) Endrepeat

 

(1-3)元となるPWM信号の作成

先の被変調信号(MOD)とキャリア信号(CAR)の大小を比較して元となるPWM信号を作ります。

回路を考えるのでしたら、ここでコンパレータモデルなどを使用しますが、簡単に信号を生成するためLTspiceのビヘイビア電圧源B(Arbitrary behavioral voltage source)を使用します。

このビヘイビア電圧源BはLTspice独自の機能で、しかも、Bエレメントになっているため、他のSpiceに移植する際は注意が必要です。(他のSpiceではBエレメントはPspice ではGaAs FET、HspiceではIBISモデルに割り当てられています)

記述は下記のようになります。

被変調信号(MOD)がキャリア信号(CAR)を上回った時に1 V、それ以外の時に0になるようにしています。
また、出力ノード名をPWMとしています。

 

 

【図5】元となるPWM信号のモデル

 

今回は信号生成までとして、続きはまた次回ご紹介したいと思います。
次回は、デッドタイムの追加と生成した信号で回路をドライブしてみたいと思います。

Wave Technology(WTI)電源設計課では、スイッチング電源の設計のご依頼にお応えすると共に、上記のようなシミュレーション評価も行っております。その他WTIでは、各種シミュレーション、ノイズ対策、またリバースエンジニアリング、カスタム計測、機構設計など電源以外のことや電気回路設計以外でも幅広い知識と経験を有しております。何かお困りのことや『こんなことができないの?』 などのご要望がありましたらまずはお気軽にご相談下さい。

 

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