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SiCデバイスを使って電源を高効率化してみました

はじめまして。電源設計課の富永です。

私は、パワーコンディショナ(PCS)の開発に携わっており、SiCパワー半導体を使用する機会がありましたので、少し紹介します。
WTIの電源設計サービスはこちらをご参照ください

電子回路設計 ヒントPLUS☆ パワエレ設計(ダイオードの選定)で記載しているように、半導体材料をSiからSiC(炭化ケイ素)にすることで、ショットキーバリアダイオード(SBD)の耐電圧が向上し、PCSのDC/DCコンバータで使用できるようになりました。SiCにすると性能は良くなるのですが、これまではコスト面の課題でなかなか使用するまでには至りませんでした。しかし、ここ1,2年でコストの課題も改善し、使用する機会が増えてきました。

ここで、ダイオードの種類と特徴について簡単にご説明しておきます。

Siのファストリカバリダイオード(FRD)は、いわゆるPN接合型のダイオードで、流れている電流を順方向から逆方向に切り替える際の切り替わり時間を速くしたデバイスです(これをリカバリタイムといいます)。リカバリタイムの間に逆方向電流が流れ、損失となるため、切り替わり時間を早くしています。順方向電圧は、リカバリタイムとトレードオフの関係があるため、動作条件に合うものを選択する必要があります。

これに対し、SiのSBDは、金属とN型半導体を接触させた際に生じるショットキー障壁を利用したダイオードで、順方向電圧がFRDよりも低く、リカバリタイムはFRDよりも速いというメリットがあります。しかし、耐電圧がFRDに対し低いためPCSのような高電圧のスイッチング電源には使うことができませんでした。

SiCのSBD は、SiCという材料自体がSiにくらべて絶縁破壊電界強度が約10倍という優れた特性を持つため、SBDの課題であった耐電圧をSiのFRDと同等に上げることができます。表1に、ダイオードの種類による主な特徴を示します。

表1 ダイオードの種類別の特徴

ダイオードの種類 FRD

SBD

半導体材料

Si

SiC

耐電圧

×(200V以下)

順方向電圧(10A)

△(1.5~2.8V)

〇(0.9V)

△(1.5V

リカバリタイム

 

さて、本題に戻ります。

図1は昇圧型DC/DCDコンバータ回路の例です。PCSでは出力電圧が400Vと高いため、これまではSiのFRDを使用していました。

図1 昇圧DC/DCコンバータ回路

FRDは耐圧が高いものの、順方向電圧がSBDよりも大きいため、FRDでの電力損失も大きくなってしまいます(たとえば、FRDに10A流したときの順方向電圧が1Vであれば電力損失は10Wです)。また、スイッチング時には逆方向電流も大きく、この電流はFET等のスイッチング素子の損失にもつながります。

図2は、スイッチング時におけるダイオードの電流波形で、図中に順方向の導通損失とリカバリ時のリカバリ損失を示しています。

図2 ダイオードのスイッチング電流

 

これをSiCのSBDにすることで導通損失とリカバリ損失がFRDよりも小さくなるため、高効率を実現できます。
さらに、スイッチング周波数を高くして、コイルの小型化をすることも可能です。

このようにSiC SBDの採用は良いことずくめだったのですが、実は雑音端子電圧試験でスイッチング周波数の高調波が出てきて、対策に苦労しました。

私達は、SiCパワー半導体の普及に伴う高周波化によるノイズの問題という新たな課題に対してもノウハウを蓄積しておりますので、何かありましたらお気軽にご相談ください。

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