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蛇行配線のセオリー

みなさんこんにちは。電源設計課の真野です。
今回は蛇行配線について、ご紹介したいと思います。

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ここではタイムドメインでのデジタル信号伝送という切り口で考えています。
今時のさらに高いクロックになると、位相や周波数特性で考えないといけなくなり、また違って見えると思います。

◆蛇行配線って何?

正しくはミアンダ配線と言って、等長配線手法の一つです。

下の図Aの写真のようなくねくねした配線パターンで、パソコンの自作をされる方であれば、基板にこんなパターンが走っているのを見たことがあるのではないでしょうか。

 

図A 蛇行配線 基板 例

 

◆なぜ蛇行させるの?

近年はシリアル伝送が主流ですが、多量のデータ伝送が必要なものには相変わらずパラレル伝送が使われています。

パラレル伝送で厄介なのが、配線層(表面配線か内層配線か)やビアの数、線路長で違ってしまう個々の配線の伝搬遅延を揃えないといけないことです。

遅延時間が異なると、データのタイミングがずれ誤動作してしまうからで、配線長で遅延時間を調整し、データのタイミングを合わせようとするものです。

◆蛇行のパターン形状で違いがある?

セオリーでは、「(自分自身に近づけないように)線間距離を広く、蛇行幅を浅くするように」と言われています。ただ、実際には基板スペースの関係で、なかなか思うように配線できないのが現状です。

(1)線間距離による影響

では、蛇行パターンでどんな影響があるのか、まずは、蛇行する配線同士の線間距離による傾向を見てみます。

配線長と蛇行回数は同じで、線間距離を1.25 mm 、0.7 mm、0.1 mmと狭めていった場合、伝搬波形は【図1】から【図3】のように、狭いほど、遅延量が少なくなりました(波形は正規化されています)。

つまり、期待した遅延が得られなくなることが分かります。
これは、線間距離が狭い程、配線間の結合(※)が大きくなる影響で、これが「線間距離を広く」と言われる理由です。

※)結合の影響を下記の簡単なモデルで確認してみました。
結合係数を0.1から1まで変化させた場合、結合係数が大きくなる程、つまり線間距離が狭くなるほど元の信号波形に近くなり、遅延が小さく見えることが分かります(ここでは省きましたが、実際には、さらに線間の結合容量も考量する必要があります)。

 

 

(2)蛇行回数を変えた場合の波形の変化

次に配線の曲げの影響を見るため蛇行回数を変えてみた場合はどうでしょう。

線間距離を0.1mmに固定して蛇行回数を5.5回、3回、1.5回と減らしていった場合、【図5】から【図7】のように、遅延には変化は見られませんでした。並行する距離に大きな変化がなかったためと考えられます(曲げの影響も今回の周波数程度では大きくなかったのでしょう)。

 

 

◆結局のところ

やはり、セオリーどおり「蛇行は線間距離をできる限り広くとる」ことは間違っていないようです。
(では、どれだけ離せばよいかは信号の周波数帯域によって異なってきますので一概には言えません)

また、意外に蛇行回数を減らしても影響が見られませんでした(曲げ回数が減ると遅延が増加するはずでした。曲げ部分で信号が内周を通ろうとするためです)。ここらあたりは、さらに周波数が高くなると見えてくるのだと思います。

大半の基板CADは、配線の幅、厚さと、基材の比誘電率から伝搬遅延を求めているだけで、自分自身のクロストークによる遅延の影響は考慮していません。
苦労して蛇行配線をしてCAD上では遅延時間が合わせることができていても実物は違っていた…ということが今回のように蛇行の形状による傾向を知っておくことで、防げるのではないでしょうか。

Wave Technology(WTI)では、基板設計や試作実装のみ、評価のみなど、開発設計の一部受託にも対応いたします。その際には、本ブログでご紹介させていただいたような信号系での考慮なども行っております。

特殊電源の設計、各種シミュレーション、ノイズ対策、リバースエンジニアリング、カスタム計測、機構設計など幅広い知識と経験を有しております。何かお困りのことや『こんなことができないの?』 などのご要望がありましたらまずはお気軽にご相談下さい。

 

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