こんにちは、パワーデバイス設計課パワー設計第二ユニットの中本です。
今回が初登場になります。よろしくお願いします。
当社では様々な技術サービスを提供させていただいております。私が携わる分野においては、パワー半導体の評価サービスが好評をいただいており、中でも特にお問い合わせが多い内容はスイッチング特性の評価サービスです。スイッチング特性評価の概要については当社ホームページの「パワーモジュール評価」サービスのページに詳細を載せていますので、ご参照ください。
今回はそのスイッチング特性評価において、重要な測定器であるオシロスコープについてお話しいたします。
オシロスコープとは電気を目で見る基本的な測定器です。パワー半導体の分野においても例外ではなく、スイッチング特性評価において、パワー半導体の電気信号の変化を時間の経過とともに観測する手段にオシロスコープを使います。
過去のブログの抜粋になりますが、パワー半導体の『理想のスイッチング動作は、ON/OFFする際に電流と電圧の遅れ時間がない状態、つまり電力損失の発生がないこと』です。理想的なスイッチング動作を目指して、材料を変え、構造を変え、味付けを変え、パワー半導体は日夜開発が続けられています。また、パワー半導体のスイッチング速度が理想に近付くに連れて、その動作を観測するオシロスコープも、より高い測定精度が求められるようになります。
では、正確な波形を取得するにはオシロスコープのどの仕様に着目すべきでしょうか?
色々ありますが、『周波数帯域』や『サンプルレート』が着目すべき代表的な仕様になります。これら仕様の概略をご説明しておきます。
周波数帯域とは
入力信号に対して、-3 dB減衰するポイントです。使用しているオシロスコープの周波数帯域に「DC~500 MHz」と規定があれば、“このオシロスコープは500 MHzで3 dB減衰しますよ。”という意味になります。
例を挙げて説明すると、500 MHz帯域のオシロスコープで500 MHzの1 Vp-pのサイン波信号を観測すると、0.70 Vp-pの電圧が観測されるということです。
したがって、オシロスコープの周波数帯域が高ければ、入力信号の周波数に対して、オシロスコープの周波数特性がフラットな特性範囲内で観測できる可能性が高まります。
サンプルレートとは
アナログオシロスコープが一筆書きで波形を表示するのに対して、デジタルオシロスコープでは一定の間隔でデータを抽出し、その瞬間のデータを表示し、表示されたポイント間を結び波形を構成します。サンプルレートはそのポイント間の比率のことを言います。
サンプルレートが1 GS/s(ギガ・サンプル/秒)と500 MS/s(メガ・サンプル/秒)では、500 MS/sの方が2倍のサンプリング間隔でデータを抽出していることになり、荒い波形に見えてしまいます。逆に言うと、サンプルレートが高いほど、密なサンプリングポイントで表示されるため波形の正確性の向上に繋がります。
上記の『周波数帯域』と『サンプルレート』が、これまでオシロスコープについて特に注意してきた仕様になります。
そしてもう一つ、今後パワー半導体を測定していく中で注目している仕様は垂直軸分解能になります。合わせて垂直軸分解能について説明しておきます。
垂直軸分解能とは
名前のとおりになりますが、オシロスコープのスクリーンにおいて電圧や電流を測定する垂直軸側の分解能のことになります。使用しているオシロスコープの垂直軸分解能の項目に8 bitと表記されていれば、フルスケールのレンジに対し28、すなわち256分割した値が垂直軸分解能になります。例を挙げて説明すると、フルスケールが1000 Vのレンジであれば256分割した約4.0 Vが垂直軸分解能になります。
垂直軸分解能の性能が高ければスイッチング波形測定時にオン電圧も精度良く測定できるようになります。垂直軸分解能に注目しているのは上記が理由になります。
パワー半導体の分野ではスイッチする瞬間の電気的振る舞いを確認することが非常に多く、スイッチング動作時に十分な周波数帯域やサンプルレートを有しているオシロスコープでなければ、正確なスイッチング特性を測定することが困難になります。
以上、ご紹介させていただきましたように、パワー半導体の評価には専門的知識と適切な測定環境が必要ですので、もしお困りごとがありましたら、経験豊富なエンジニアがいる弊社へお問い合わせください。
また、今回はスイッチング特性評価(動特性評価)に関するオシロスコープについてお話しをしましたが、静特性評価や信頼性試験の対応も可能です。こちらについてもお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。
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