前回に続いて差動回路のお話をします。
差動回路の正相信号端子に矩形波を入力します。また、その180度位相反転した信号を逆相信号端子へ入力します。2つの入力信号は逆位相関係が得られているのでコモンモード電流は発生しません。
次に逆相信号端子へ10ns早く立上った信号を入力するとどうなるでしょうか。
入力側の2つの信号線路間では10nsのズレ分がコモンモード電流(ノイズ)として発生します。
次に下図のモデルで放射電界を算出*1します。
ノーマルモード電流とコモンモード電流は共に2 mAとし、差動回路の入力線路(長さ30 cm)から3 m離れた場所でのノーマルモード・コモンモードの放射電界を示します。
コモンモード電流による電界強度はノーマルモードと比べ、けた違いに大きいことがわかります。EMI試験を行い、規格値を超える場合は対策が必要になります。
対策は入力信号線路インピーダンスの最適化を行うか、コモンモードに効果のあるフィルタの使用を考えます。
*1 EMC概論演習 上芳夫ほか 科学情報出版株式会社