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こんどは磁力線が見えた!

みなさんこんにちは。技術教育センター長の前川(まえがわ)です。

4月に新入社員が入社して元気に新人研修を受けてくれています。その研修講座の一つに私が教えている電磁気学があり、前回に引き続きその講座でのエピソードをご紹介します。

このブログでは、当社メインキャラクターの「なみりん」(当社へ入社志望の女の子)と、イッくんとのインタビュー形式でお送りします。(イッくんは下名のニックネームです(イクセイ))

■なみりん: 新入社員が研修で学んでいる電磁気学講座で、また面白い実験をしたと聞いたけど、どんな実験ですか?

 

■イッくん: 電磁気学講座ではこれまで静電気による電界や電位について学び、その応用であるコンデンサの原理や電流の発生メカニズムなども理解してきましたが、9月からは磁界について学習しています。その中で、磁界が発生する起源は、電界の電荷と違い、電子の移動や自転であることを取り上げています。それを体感する実験として、アンペールの法則とよばれる電流による磁界の実験を右写真のようにおこないました。

赤い銅線を束にして電流を流し、その周囲に発生する磁界を観察するために方位磁石を周りに並べたところ、見事!アンペールの法則のとおりに磁石がきれいに円周状に向きました(銅線には矢印の方向に電流が流れています。)。磁力線は目に見えませんが、このように磁石を使うと発生している様子がよくわかります。

 

■なみりん: へえ~、教科書の絵のようにきれいに円になるんだわ。それは、どんな大きな円周でも同じかな?

 

■イッくん: アンペールの法則では、電流による磁界は電流からの距離に反比例するのですが、それを調べるために、今度は方位磁石を一直線に並べてみたところ、右写真のように、近いほど円周状になり、遠い磁石は地磁気の向きになっています。これにより、アンペールの距離による反比例則(下式)がおよそ確認できました。

 

 

 

■なみりん: 磁力線は見えないけど、ちゃんと法則のとおりにぐるぐる回っているのね~。 改めて、アンペールさんは偉い人だとわかりました。ところで、このような電流の周りの磁界が回路にどのように影響しているのかなぁ?

 

■イッくん: そう、とても大事なことに気がつきましたね。電流の周りに磁界ができるということは、右図のような一直線の電線でもインダクタンスを持つということなんです。インダクタンスとは電流の変化による逆起電力の発生しやすさであり、一直線の電線でも弱いインダクタンスを持ちます。電線を渦巻にしてコイルを作るとインダクタンスが大きくなるのは、電線の磁界が重なるからなんですね。

ですから、交流電流が流れる配線においては意図しない寄生インダクタンスが発生します。この寄生インダクタンスは、交流の周波数に比例する交流抵抗(インピーダンスといいます)として作用するので、高周波になるとこのインピーダンスが大きくなり回路動作への影響を無視できなくなるのです。つまり、高周波では単なる配線の引き回しでもこの影響への配慮が必要なんですよ。

 

■なみりん: そうなんだ、磁界のインダクタンスを発生するのはコイルだけかと思っていたわ。またひとつ、勉強になりました。

 

■イッくん: この配線の寄生インダクタンスは、高周波交流だけでなく、直流でスイッチをオンオフする場合でも影響します。スイッチをオンオフする際の急峻な電圧変化には、その10~100倍もの高周波成分(高調波)が含まれていることが多いので、寄生インピーダンスが右図のようなリンギングを発生させノイズの原因になることがあります。こちらについては次の当社ブログを参考にしてください。

⇒ 回路図の理想と現実 ~ 配線や部品の中も回路図なんですよね!

このように、電磁気学講座では、回路の重要課題であるノイズの発生源についても原理に基づく基礎知識と経験を得ることができ、これにより、様々なノイズを抑制し仕様どおりの回路を設計できる技術者に一歩、近づくことができます。基礎を学ぶことは、一見して遠回りですが、実はとても共通的で応用範囲の広い技術の理解に繋がるのですよ。

 

■なみりん: なるほど、基礎理論は実はとても役に立つことがわかりました。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。では、次回をお楽しみに。

 

* 地磁気とは、地球の南極がN極で磁力線を放出し北極のS極が吸い込む磁界のことで、その発生原因は地球内部の液体金属の対流とする説(ダイナモ理論)などが考えられていますが、まだよく解明されていないそうです。また、不思議なことに、平均して100万年に1.5回ほど地磁気が逆転してきたことが古代の岩石からわかっているそうで、その内、方位磁石がNを示すと南の方角、という時代が来るかもしれません。

 

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