Wave Technology(WTI)-ウェーブ・テクノロジ

WTIは技術者不足を解決する「開発設計促進業」です

PWM調光と音声ノイズ

みなさんこんにちは。テクノシェルパ技術コンサルタントの赤谷です。

早いもので今年ももう4月となり私どもの事務所からも桜が見える季節になりました。

新年度のスタートとして気持ちも新たにブログを投稿して参りますのでどうぞよろしくお願いします。

今回のブログでは、照明やモニタの輝度調整で用いる「PWM調光」と「音声ノイズ」の関係について解説します。

(当社のEMC対策コンサルサービスはこちら

 

まず、PWM(Pulse Width Modulation)調光ってなんぞやについて説明します。

簡単に言いますと人間の眼では分からないほどの速さでLEDなどを点滅させることで輝度を調整する制御方式です。この点滅動作でオンとオフの時間比率が同じだとデューティーは50%となり、全点灯(デューティー100%)の時より当然ながら輝度は低下します。

ちなみに人間の眼の光強度に関する感覚は鈍く、線形制御では変化をあまり感じることができないため、階調設定には指数関数を用います。

つまり最大輝度の状態(デューティー100%)から一段階輝度を下げる場合はデューティーをおよそ50%にします。もう一段下げるとデューティーはその半分といった具合です。

ここで階調を多くし調光比を高くしようとする場合、PWMの周期はできるだけ長く設定する必要があります。

 

デューティー10%のPWM波形イメージ

 

私の経験では3000:1で調光する場合、PWMの周波数は100 Hzくらいにする必要があります。なぜなら、電気信号の最小パルス幅は回路構成などで必然的に決まってくるため、調光比を高くする場合、PWM周期を長くすることで調整するしかないためです。

しかし、このような低い周波数のPWM制御は音声回路にとっては実に厄介なものとなります。

既にお気づきのエンジニアの方もいらっしゃるかと思いますが、その理由について解説していきます。

まず、LEDなどの照明をPWMでオンオフ制御するということは、システムの電源からすると急激な負荷変動が繰り返し発生している状態になります。電源の負荷応答性や電源パターンのインピーダンスなどによりますが、少なからずこのような負荷変動では、電源にリップルが発生します。

 

PWM制御と電源リップルの関係

 

ここで発生する電源リップルは、PWM周期と同期するため、PWMが100 Hzなら電源リップルの周期も100 Hzとなります。

もしこの電源をオーディオ回路でそのまま使用していると100 Hzという可聴帯域のノイズがオーディオ回路に混入することになり、「ブゥーン」といったビートノイズがスピーカから出力されてしまいます。多くの場合は静かなところで耳を澄まし、音量設定を大きくしないと気付かないレベルです。皆様も身の回りの製品で画面の輝度などを落としたときにスピーカからビートノイズが聞こえるなら、間違いなくこれが原因です。

 

電源リップルとノイズ再生の関係

 

先ほども述べましたが100 Hzという低い周波数は非常に厄介で、周波数が低すぎるがためにフィルタなどでは簡単に除去することができません。このため、根本的な対策としては電源構成の見直しが必要となります。

一般的にはリップルを含む電源をレギュレータなどでダウンコンバートして完全にリップを除去した電源をオーディオ回路に供給します。

 

調光ノイズ対策された電源の回路構成例

 

このような問題は検証段階になって気づくことが多いですが、対策としては大きな見直しが必要となり、基板に部品が実装できないなど開発へのインパクトも大きなものになりかねません。

このため、設計構想段階からPWB制御が与える影響についてしっかりと検証しておくことが大切となります。

 

設計は完了しこれらか試作を行うけれどもEMCなどの面で不安があるお客様は、是非、当社にご相談下さい。当社の「EMC対策コンサルサービス」で経験を積んだエンジニアが設計レビューなどのお手伝いをさせていただきます。

 

【関連リンク】

 

 © 2005 Wave Technology Inc.