信号伝送線路上にノイズの伝導を見つけた場合は、EMI対策としてフィルタを検討することがよくある。


フィルタですか?
そうじゃ。 私が学生時代の電気回路・伝送回路の世界では(波を濾すと書いて)濾波器と呼ばれていたんじゃが、今はフィルタと呼ぶのが一般的じゃ。まあそれだけフィルタは古くから使われておる。


昇平博士、フィルタってどんな目的で使うんですか?
送信側から受信側へ信号を伝送するときに、必要な信号成分のみ伝送し、不要な信号(ノイズ)を除去したいときにフィルタを使うのじゃ。 今回はコイル(インダクタ)を例に説明しよう。 なみりん、コイルのインピーダンスZはどのように表現するかい?


インピーダンスZ = jωLです。
インダクタは、周波数が低いときはインピーダンスも低く、周波数が高くなるとインピーダンスも高くなる受動素子です。
そうじゃな。 インダクタ1個でも2通りのつなぎ方があり、それぞれ全く真逆な動作をするのじゃ。


えっ、もっと具体的に教えてください。
まず1つ目は、図のように信号源とレシーバ線路上に直列にインダクタを入れた場合じゃ。
信号源の周波数を変化させるとレシーバ側にはどのように信号が使わるか説明できるかい?
さきほどと同じように考えれば良いのじゃ。


はい、昇平博士。 周波数が低いとレシーバ側に信号が伝わりますが、周波数が高くなるとインダクタのインピーダンスが高くなるのでレシーバ側には信号が届きません。
そうじゃな。周波数の低い信号のみ通過するのでローパスフィルタ(Low-Pass Filter)と呼ぶわけだね。 これは信号の反射状態(Sパラメータ)で見ても同じことが言えるんだ。 周波数が低いときは負荷(レシーバ)が見えるけど、周波数が徐々に高くなると軌跡はレシーバから離れてやがて開放状態になるんじゃ。



話が脱線してしまうんですが、受動部品のメーカさんが提供してるインダクタの通過特性(S21)は、周波数が高くなるとインピーダンス(減衰)が高くなりますが、さらに周波数を高くすると、ある周波数でまたインピーダンス(減衰)が低くなるんです。
おっ、なみりん。良いところに気がついたね。
それはインダクタに並列容量が存在するからなんだよ。
いわゆるストレーキャパシティー(#042 高周波 参照)じゃ。
積層コイルを例に等価回路で表現すると右図になる。
つまりインダクタには容量成分との並列回路が構成されるため並列共振が存在するのじゃ。
この共振周波数(自己共振周波数とよぶ)より高い周波数帯域に不要信号(ノイズ)があるとインダクタの効果が期待できなくなるので注意せねばならんぞ。
2つ目の話は次回にしようかね。
