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#090 EMI対策 ~ 並列素子のSパラメータ(インダクタ編その2)~

今回は2端子対回路の中にインダクタLを並列接続したときの反射損失と通過損失を求めます。

 

 

#089 EMI対策 ~ 並列素子のSパラメータ(インダクタ編)~ にてS11S21を求める式ができておるので、Excelの複素関数を使って周波数特性を表現してみるのじゃ。

 
 
 

① 最初に初期条件設定として、インダクタLと特性インピーダンスZOを記述します。ここではLを10nH、ZOを50Ωにします。
② つぎに周波数fを記述し、角速度ω( =2 π f )[rad/s]を求めます。
③ さらに角速度ωとインダクタLとの積でリアクタンスωLを求めます。

 

 

 

つぎはS11を求めるために複素関数を使ってみるのじゃ。

COMPLEX関数を使います。
④ S11の分子の実数は-50、虚数はゼロになります。
⑤ S11S21の分母の実数は50、虚数は2ωLになります。虚数単位はjです。

 

 

 

つぎに
⑥ S11は、IMDIV関数を使って④の分子を⑤の分母で割って求めます。
⑦ IMABSを使って、絶対値|S11|に変換しました。
⑧ ⑦で求めた絶対値|S11|の対数をとり、20倍しました。
これが反射損失になります。

 

 

 

つぎはS21を求めてみるのじゃ。

S21
⑨ COMPLEX関数を使って分子を記述します。IMDIV関数で前述の分子から分母で割るように記述します。
⑩ ⑨の結果からIMABSを使って、絶対値|S21|に変換しました。
⑪ ⑩で求めた絶対値|S21|の対数をとり、20倍します。
これが通過損失になります。

 

 

 

S21から通過損失も求まったようじゃな。
横軸を周波数[MHz]にして、反射損失と通過損失をグラフ化してみるのじゃ。

反射損失と通過損失のグラフは下のようになります。
インダクタ10nHを伝送線路上から負荷の間で並列接続すると通過損失は400MHzで約3dB減衰し、さらに周波数を低くするごとに減衰量が大きくなります。一方、反射損失で見ると400MHzより低い周波数では入力反射量が大きくなっています(全反射)。これはハイパスフィルタ(HPF)だわ。

 

 

 

インダクタの並列接続は、なみりんが示した周波数特性が理想動作になる。
現実にはインダクタLのほかに等価直列抵抗ESR、浮遊容量Co、等価並列抵抗EPRなるものが存在するので、どのような特性になるのか次回から演習してみよう。

 
 
 

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