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ファン付きヒートシンクの冷却効果について


構造設計課の瀬角です
みなさん、こんにちは。構造設計課の瀬角です。

今回は便利な放熱対策であるファン付きヒートシンについて、お話しさせて
いただきます。
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ファン付きヒートシンクとは?

ファン付きヒートシンクとは、その名の通りヒートシンクにファンを取り付けたものになります。ヒートシンクだけでは放熱性能が足りず、かつ余剰スペースが限られるときなどに使います。
ファン付きヒートシンクには様々な構成があり、基本的な構成を図1と図2に示します。
図1では、ヒートシンクの真上にファンを取り付けており、ファンからの風でヒートシンクを冷やします。また、製品によっては四隅のプッシュピンで基板に固定するなど、取り回しも簡単です。図2のように、ヒートシンクフィンの一部をくり抜いて、そこにファンを配置する構成もあります。

図1 ファン付きヒートシンク①	図2 ファン付きヒートシンク
図1 ファン付きヒートシンク① 図2 ファン付きヒートシンク

ファン付きヒートシンクの冷却効果

ファン有無によるヒートシンクの冷却効果を熱シミュレーションで比較します。
ここでシミュレーション条件を図3に示します。ピンフィン型ヒートシンクに熱源と放熱シートを貼り付け、ファンありの場合はフィンの上にファンを配置します。また、ファン特性として圧力/風量特性を設定します。

図3 ファン有無検討の熱シミュレーション条件 図3 ファン有無検討の熱シミュレーション条件 図3 ファン有無検討の熱シミュレーション条件
図3 ファン有無検討の熱シミュレーション条件

ファン有無のシミュレーション結果比較として、ファン中央を通る断面の温度分布を図4に示します。
ファンありの熱源温度は87℃であるのに対して、ファンなしでは139℃の結果です。ファンの風によってヒートシンクから外気へ放熱するため、熱源温度が下がります。なお、ヒートシンク熱抵抗※は、ファンありが 1.41 ℃/W、ファンなしが4.03 ℃/Wです。

※ヒートシンク熱抵抗=( ヒートシンク根本温度 - 環境温度 )/ 発熱量

図4 ファン有無における断面温度分布比較
(a)ファンあり       (b)ファンなし
図4 ファン有無における断面温度分布比較

 

このように、ファンを取り付けることで冷却能力が上がり、部品温度上昇を抑えることができます。
ただし、ファンありのヒートシンク中央部分ではフィンと空気の温度が高くなっています。これはファンありでの断面風速分布を図5に示すようにヒートシンクの中央付近に風が流れていないことが確認できます。

(図5aは横から見たとき風の流れであり、風はファンからヒートシンクへ向かい、フィン部分で外側に曲がります。そして、フィン高さ中央の断面を通る風速分布(図5b)を見ると、ヒートシンクの中央付近に風が流れていません。)

図5 ファンありでの断面風速分布
(a)ファン中央を通る断面      (b)フィン高さ中央を通る断面
図5 ファンありでの断面風速分布

 

ファン付きヒートシンクではファン(軸流ファン)の風を直下のヒートシンクに当てています。ここで、軸流ファンは軸部分のモータを回して羽根で風を流す部品であり、中央の軸部分からは風が流れません。
一方で熱源にヒートシンクを取り付ける場合、多くは熱源が中央になるように位置決めします。しかし、風を当てたい熱源直上部に風が当たらないことになるため、ヒートシンクの性能を活かしきれておらず、放熱性能に改善の余地があります。

ファン付きヒートシンクの冷却性能をさらに上げるには、大きく2つの対策方針があります。

【対策方針】

  1. 風の流れを変える
  2. ヒートシンク形状を変える

対策方針①では、ファンの種類や位置を変えてヒートシンク中央に風を流していきます。しかし、ファン付きヒートシンクを使いたい場面は余剰スペースがないときなどであるため、この方針をとれないことが多いです。
対策方針②では、ヒートシンク形状を変えることでフィンへ効率的に伝熱し、放熱性能を上げます。次節では、ヒートシンク形状変更の内容を紹介します。

ファン付きヒートシンクの冷却改善

ヒートシンク形状変更による放熱性能向上について紹介します。
「ヒートシンク中央部に風が当たらないのであれば、風が当たる箇所へより伝熱するようにしよう」というコンセプトでヒートシンク形状を変更します。形状変更前後のヒートシンクモデルを図6に示します。
形状変更前のピンフィン型ヒートシンクに対して、形状変更後では、放射状にフィンを伸ばし、かつヒートシンク中央部を銅ブロックに変更します。風が流れる箇所(ファンの羽部分)と重なるようにフィンを配置しています。

図6 形状変更前後のヒートシンクモデル
(a)形状変更前         (b)形状変更後   
図6 形状変更前後のヒートシンクモデル

 

ヒートシンク形状変更前後の熱シミュレーション結果比較を図7に示します。
ヒートシンク形状を変更することで熱源温度が81℃まで下がります(形状変更前は87℃)。さらにファンの風は放射状に伸びたフィン全体を流れることが確認できます。
以上からヒートシンク形状変更後は、フィンへ効率的に伝熱しフィンに風が流れることで、放熱性能が上がります。(ヒートシンク熱抵抗:変更前 1.41℃/W → 変更後 1.12 ℃/W)

図7 形状変更前後のシミュレーション結果
(a)形状変更前        (b)形状変更後    
図7 形状変更前後のシミュレーション結果   

 

まとめ

ファン付きヒートシンクは取付や運用が簡単な放熱部品であり、ヒートシンクだけでは放熱効果が足りないときに手狭なスペースでも放熱対策を施すことが可能です。さらに、周囲環境に余裕があるなら冷却効果には改善の余地があります。

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