みなさん こんにちは。技術教育センターの河野です。
今回のブログは新入社員向けに実施している講座の中で高周波回路講座の中身を少しだけ紹介したいと思います。
当社では、4月に入社した新入社員は1年間、Off-JT(Off the Job Training)として技術教育センターが主催する講座を受講していただきます。その講座の中に電磁気高周波回路講座というものがあります。前半は電磁気学、後半が高周波回路に関する内容となっており、小生はその後半部分の講師を担当しています。以前、ずいぶん前ですがスミスチャートに関連したブログを連続もので紹介させていただいていました。
(ブログ・スミスチャートとは? ~きちんと知ると便利です~)
高周波とはなんだ?と思われる方も大勢いらっしゃると思います。当社に入社される社員においても例外ではなく、高周波とは何?と頭の中で“?”がグルグル回っている新入社員もいることでしょう。そういった疑問を少しずつ紐解きながら基本的な内容から学習します。
インピーダンスマッチングとは?
その講座の中で高周波回路において重要なポイントとして、インピーダンスマッチングというものを学習します。インピーダンスマッチングとは電気信号の送信と受信のインピーダンス(電気的な抵抗)を同じ値にすることで送る電気信号を最大化することです。
それでは、ここからもう少し具体的なインピーダンスマッチング回路の基本について説明します(図1)。説明をできるだけ簡単にするために純抵抗の場合に絞って説明します。純抵抗というのは複素数がゼロであり、スミスチャート上で実軸にあるインピーダンスのことを言います。RAからRBへのインピーダンス変換することでインピーダンスマッチングを行うことを例に挙げて説明します(RA<RB)。
今回はLow Pass型での変換回路を使ってインピーダンス変換を行います。Low Pass型の変換回路というのは直列にコイル、並列にコンデンサを配置したフィルタタイプの回路です。以下のようないくつかの原理原則があります。
その1:抵抗素子は使わない。(高周波で抵抗を使用すると損失になってしまうので、インピーダンス変換には抵抗は使いません。)
その2:インピーダンスが高い方に並列素子、低い方に直列素子を配置。(今回はLow Pass型なので、並列にコンデンサ、直列にコイルを配置します。)
その3:RAからRBへ一足飛びすると帯域が狭くなる。(RCといった中間のインピーダンスを介して段数を増やした方が帯域は広くなります。)
それでは図1のコイルとコンデンサの値を求めてみましょう。次の計算式から求めることができます。まずRAからRBに一足飛びにインピーダンス変換する場合は、
この式から求められます。例えばRA=10 Ω、RB=50 Ω、f=1 GHzの場合、L=3.2 nH、C=6.4 pFとなります。
次にRCを介して2段のLow Pass型のコイルとコンデンサの値を求めますが、最初にRCを求める必要があります。RCは次の式から求められます。
例えば、先ほどと同じ例でRA=10 Ω、RB=50 Ωとすると、RC=22.4 Ωとなります。RCが求まったので、(1)式を使ってRAとRCからL1とC1を、RCとRBからL2とC2を求めることができます。先ほどと同じf=1 GHzで計算すると、L1=1.8 nH、C1=7.9 pF、L2=4.0 nH、C2=3.5 pFとなります。
いかがでしょうか。少々、計算が面倒ですが、これらの式を使うと簡単にインピーダンスマッチングの回路設計が可能となります。
今回、高周波回路講座の中のインピーダンスマッチングに関する解説をさせていただきました。学生時代に電気電子の専攻外のエンジニアの方でも、実務対応可能なエンジニアまで育成する独自の教育プログラムがございます。将来、エンジニアとして働きたいけど専門知識がなく不安を抱いている方もやる気があれば必ず立派なエンジニアに成長できますので、当社の新卒採用、中途採用に奮って応募ください。
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