みなさん、こんにちは。
評価解析技術課の中松です。
前回のブログでは短絡試験についてお話ししましたが、今回は破壊試験繋がりで、パワーMOSFETの「アバランシェ耐量試験」について解説します。
パワーMOSFETのアバランシェ試験とは?
パワーMOSFETのアバランシェ試験とは、MOSFETが過電圧によってアバランシェ状態になった際の耐量を評価する試験です。代表的な試験方法としてUIS(Unclamped Inductive Switching)試験があります。アバランシェ耐量を確認することで、過電圧が発生した際にMOSFETが破壊しないかの指標を評価できます。
アバランシェ耐量とは?
アバランシェ耐量とは、パワーMOSFETがアバランシェモードで動作した際に、どの程度の電流やエネルギーに耐えられるかを示す指標です。
もう少しわかりやすく説明しますと、パワーMOSFETに耐電圧以上の電圧を印加していくと急激に電流が流れはじめ(この状態をアバランシェ状態(またはアバランシェモード)と呼びます)、条件によっては破壊に至る可能性があります。
そして、急激な電流量の増加の様子がアバランシェ(Avalanche:雪崩(なだれ))のようであることから、この現象をアバランシェ降伏または雪崩降伏と呼びます。
つまり、アバランシェ耐量試験ではパワーMOSFETを意図的にアバランシェ状態にして、規定された条件における耐量や、破壊に至るまでのエネルギーを評価します。
パワーMOSFETのアバランシェ降伏の原理とは?
ではアバランシェ降伏の原理についてご説明します。
パワーMOSFETに耐電圧以上の電圧を印加した場合、以下のような現象が発生します。その原理を図1とともに説明します。

図 1 アバランシェ降伏のイメージ図
①高電界によってMOSFETの空乏層中のキャリアが加速される。
②十分に加速されたキャリアが原子と衝突することで、原子の価電子をたたき出し、新たに電子とホールが生成される。
③原子に衝突したキャリアと新たに生成されたキャリアはそれぞれ高電界によって加速される。
④それぞれ他の原子に衝突し、さらに電子とホールを生成する。
⑤これを繰り返すことで次々にキャリアが増加し、電流が流れる。
なぜアバランシェ耐量試験が必要なのか?
パワーMOSFETでは回路の寄生インダクタンスやトランスの漏れインダクタンス等によってMOSFETのオフ時に過電圧が発生し、アバランシェモードに入ることがあります。
アバランシェモードに入るとパワーMOSFETに極度のストレスがかかるため、信頼性の低下やMOSFETデバイスが破壊する可能性があります。
アバランシェモードが許容されているパワーMOSFETもありますが、できるだけアバランシェモードに入らないように回路を設計することが望ましいです。
一方で、万が一アバランシェモードに入った場合でも問題ないかを検証するために、パワーMOSFETのアバランシェ耐量を評価しておくことが重要になります。
パワーMOSFETのアバランシェ耐量試験「UIS」の方法とは?
パワーMOSFETのアバランシェ耐量を評価する代表的な試験方法にUIS(Unclamped Inductive Switching)試験があります。
アバランシェ耐量を測定する試験回路と波形を用いてご説明します。
UIS試験ではDUTを一旦オンにしてL負荷に電流を蓄えます。
その後DUTをオフにし、インダクタ(L負荷)の逆起電力と電源電圧によってMOSFETをアバランシェ動作させます。
そして、アバランシェ期間中にMOSFETが消費するエネルギーを評価します。

図 2 UIS試験回路と波形
アバランシェエネルギーEASはどのように求めるか?
アバランシェエネルギーEASとは、アバランシェ期間中に消費するエネルギーのことで、UIS試験ではインダクタンスLとアバランシェ電流IASなどから算出します。
それではアバランシェエネルギーEASを求めてみましょう。
まず、アバランシェ期間の時間tAVを求めます。電流のピーク値をアバランシェ電流IASとし、電源電圧をVDD、L負荷の値をLとします。アバランシェ電圧BVDSSは一定とすると、tAVは

になります。
よって、EASは

となり、EASはLに比例し、IASの二乗に比例します。
ところで、データシート上でアバランシェ耐量を比較する場合、LやIASの値が異なっていてもEASが同じになる条件であれば比較しても問題はないのでしょうか。
例えば、L=100µH、IAS=20Aの場合とL=400µH、IAS=10Aの場合でエネルギー的には同じになります。結論から言うと問題ありなのですが、それに関しては次回、説明させていただきます。
最後に ~当社のパワーデバイス評価サービスについて紹介します~
当社では、パワーMOSFETをはじめとするパワーデバイスのアバランシェ耐量試験など、各種評価試験の受託に対応しています。
実際のアバランシェ耐量試験では、デバイスの定格や試験条件を確認したうえで、アバランシェ電流IAS、インダクタンスL、電源電圧VDDなどを設定し、波形を確認しながら評価します。
また、パワーデバイスの特殊な試験環境と、特殊な試験に対応できるエンジニアを有しています。
各種パワーデバイスの評価試験や信頼性試験を必要とされる場合は、ぜひご相談ください。
また、2025年から車載用半導体向け信頼性試験サービス(AEC-Q101、AQG-324準拠)を開始しています。
パワーデバイスの各種電気的特性評価から信頼性評価まで対応できる体制を整えておりますので、パワーデバイス評価でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
よくある質問(FAQ)
Q1. パワーMOSFETのアバランシェ試験とは?
Ans. パワーMOSFETが過電圧によってアバランシェ状態になった際の耐量を評価する試験です。
Q2. アバランシェ耐量とは?
Ans. MOSFETがアバランシェモードで動作した際に、どの程度の電流やエネルギーに耐えられるかを示す指標です。
Q3. UIS試験とは?
Ans. Unclamped Inductive Switchingの略で、インダクタに蓄えたエネルギーを利用してMOSFETをアバランシェ動作させ、耐量を評価する代表的な試験方法です。
Q4. アバランシェエネルギーEASとは?
Ans. アバランシェ期間中にMOSFETが消費するエネルギーです。
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