車載半導体の信頼性試験対応を拡充中!

投稿日:2026年08月24日最終更新日:2026年08月24日

こんにちは。評価解析技術課の山本です。

ここのところ、車載半導体の信頼性規格であるAEC-Q101やAQG-324に関するお問い合わせが増えています。

ご相談の内容も、単に規格に記載された条件で試験を実施したいというものだけではありません。より多くのサンプルを同時に評価したい、試験中の電流や温度を常時監視したい、試験前後の電気的特性まで一括して測定したいなど、試験設備と計測システムの両方に高い能力が求められるケースが増えてきました。

試験項目や条件によっては、ご希望の試験台数や電圧・電流条件が、当社の従来の設備能力を上回ることもあります。そのため当社では、お客様のご要望に対応できるよう、信頼性試験設備の増強と試験環境の拡充を進めています。

また、従来の高温・高湿・バイアス系試験に加え、SiC MOSFETなどの次世代パワー半導体を対象としたDGS、DRB、dyn.H3TRBなど、動的なストレスを印加する試験についても規格対応化を実施しています。

車載半導体の信頼性試験ニーズ増加に応え、試験能力を増強

AEC-Q101とAQG-324の対象と目的

AEC-Q101は、主にダイオード、MOSFET、IGBTなどのディスクリート半導体を対象とした車載信頼性規格です。一方、AQG-324は、主に車載用パワーエレクトロニクス機器に使用されるパワーモジュールを対象としています。

対象製品や試験の考え方は異なりますが、いずれも高温、高湿、電圧、電流、温度変化など、実際の車載環境で想定されるストレスに対する信頼性を確認することが目的です。

当社へ寄せられるご相談では、次のようなご要望が多くなっています。

・一度に評価できるサンプル数を増やしたい
・高電圧または大電流条件で長時間試験を実施したい
・試験中のリーク電流や導通抵抗を常時監視したい
・試験前後の静特性やスイッチング特性も測定したい
・規格条件をベースに、実際の使用条件を加味した試験を行いたい

こうしたご要望に対応するためには、電源や恒温恒湿槽を追加するだけでなく、測定チャンネル数、配線方法、保護回路、冷却方法、自動計測システムなども含めて試験環境全体を設計する必要があります。

規格試験は装置をそろえるだけでは成立しない

車載半導体の信頼性試験では、規定されたストレスを試料に印加できることに加え、そのストレスが正しく印加されていることを確認する計測技術が重要です。

例えば、HTRBやH3TRBでは、高温または高温高湿環境で高電圧を印加しながら、微小なリーク電流を監視します。高電圧配線で生じるリーク電流や、測定系に重畳するノイズが測定結果に影響するため、絶縁、シールド、配線方法、計測器の選定に注意が必要です。

DGSやDRBなどの動的試験では、規定された電圧値だけでなく、dV/dt、オーバーシュート、アンダーシュートなどの波形条件も管理しなければなりません。

高速な電圧変化を発生させると、試験基板や配線の寄生インダクタンスによってリンギングが発生しやすくなります。そのため、試験回路の設計や基板レイアウト、ゲート駆動条件まで含めた検討が必要になります。

AQG-324・AEC-Q101準拠で対応を進める信頼性試験

主な信頼性試験と評価内容

現在、当社へお問い合わせが増えている主な試験、ならびに対応能力の増強や規格対応化を進めている試験をご紹介します。

分類

主な試験項目

主な評価内容

高温・高湿・バイアス

HTRB、HTGB、H3TRB、SSOP

高温・高湿環境でバイアスを印加し、リーク電流や電気的特性の変化を確認

温度・通電サイクル

パワーサイクル(Sec,Min)

通電による発熱と冷却を繰り返し、チップ接合部、ワイヤ、接合材などの劣化を確認

動的ゲートストレス

DGS、AC-BTI

ゲートへ正負の電圧を繰り返し印加し、VGSthやRDS(on)などの変動を確認

動的逆バイアス

DRB

高いdV/dtを繰り返し印加し、デバイス終端部やパッケージを含む耐性を確認

動的高温高湿逆バイアス

dyn.H3TRB

高温高湿環境と動的な電圧ストレスを組み合わせて信頼性を確認

動的順方向バイアス

dyn.HTFB

SiC MOSFETのボディダイオードなどへ繰り返し通電し、順方向特性の変化を確認

大電流・サージ試験

IFSM試験、大電流パルス通電試験

瞬間的な大電流に対する耐量や、破壊に至る際の電圧・電流波形を確認

試験前後の特性評価

静特性、スイッチング特性、熱特性

信頼性試験前後の特性を比較し、劣化の有無や変動量を確認

※規格の適用範囲、試験条件および判定基準は、対象デバイス、パッケージ、規格の版、お客様の要求仕様などによって異なります。

高温・高湿・バイアス系の信頼性試験

HTRB、HTGB、H3TRBなどは、車載半導体の信頼性評価における代表的な試験です。

これらの試験では、高温または高温高湿環境でデバイスに電圧や電力を長時間印加し、リーク電流や電気的特性の変化を確認します。

特に逆バイアス試験で測定するリーク電流は微小であり、試験槽内の湿度、配線材料、コネクタ、汚れなどの影響を受けることがあります。正確な評価を行うためには、試験槽だけでなく、試料接続部や測定系を含めた環境構築が必要です。

パワーサイクル・大電流パルス試験への対応

パワーサイクル試験では、デバイスへの通電と停止を繰り返し、自己発熱による温度変化を発生させます。

この温度変化を繰り返すことで、チップ、ワイヤ、はんだ、接合材などに、材料特性の違いや温度分布、接合構造などに起因する機械的なストレスが加わります。試験中のオン電圧や導通抵抗を監視することで、接合部などの劣化傾向を捉えることができます。

また当社では、ダイオードのせん頭サージ電流であるIFSMをはじめ、大電流パルスを使用した耐量評価にも対応しています。

単に試料の合否を判定するだけでなく、通電時の電流波形や端子間電圧を同時に記録することで、試験中にどのような変化が起こったのかを考察するための情報も提供できます。

DGS・DRB・dyn.H3TRBなどの動的試験

SiC MOSFETなどの高速パワー半導体では、直流電圧を長時間印加する試験だけではなく、実際のスイッチング動作を想定した動的ストレス試験の重要性が高まっています。

DGSは、ゲート・ソース間に正負の電圧を繰り返し印加し、ゲートしきい値電圧VGSthやオン抵抗RDS(on)などの変動を確認する試験です。同様の目的を持つ試験は、規格によってAC-BTI、GSSなどの名称でも規定されています。ただし、印加波形や測定手順などの詳細条件は規格ごとに異なる場合があります。

DRBは、ドレイン・ソース間に高いdV/dtを繰り返し発生させ、デバイス終端部やパッケージなどを含む動的な電圧ストレスへの耐性を確認する試験です。

dyn.H3TRBでは、高温高湿環境と動的な逆バイアスを組み合わせるため、高電圧、高湿度、高速スイッチングを同時に成立させる必要があります。静的なH3TRBと比較して、試験回路や測定系の構築難易度がさらに高くなる試験です。

当社では、こうした動的試験についても、規格条件に対応できる試験回路、駆動回路、計測システムの整備と能力増強を進めています。

車載半導体の信頼性評価を設計から支える当社の取り組み

試験回路・治具・制御ソフトまで構築

市販の試験装置だけでは、お客様が希望される電圧、電流、サンプル数、監視項目をすべて満たせない場合があります。

当社では、長年培ってきた半導体評価と計測技術を活用し、必要に応じて次のような試験環境を構築します。

・試験回路および保護回路の設計
・評価用基板の回路設計、基板設計、製作
・試料接続用治具や配線の設計
・電圧、電流、温度などの自動計測
・試験槽や電源、計測器を連携させる制御ソフトウェア
・試験前後の静特性、スイッチング特性などの測定
・取得データの整理と評価レポートの作成

「試験装置に試料を接続する」だけではなく、試験を成立させるための環境そのものを設計できることが、当社の受託評価サービスの特長です。

試験条件と必要能力を確認して個別にご提案

同じ試験名称であっても、対象となるデバイスの定格、パッケージ、サンプル数、試験温度、印加電圧、試験時間などによって、必要な設備や試験回路は異なります。

また、規格への準拠が必要なのか、規格を参考にした開発評価なのかによっても、試験計画や測定項目が変わります。

当社では、お客様から試験内容やお困りごとをお伺いしたうえで、対応可否、試験方法、必要な環境、スケジュールなどを個別に検討します。

車載半導体の信頼性試験について、次のようなお悩みがございましたら、ぜひご相談ください。

・社内設備では必要な試験台数を確保できない
・高電圧、大電流、高温高湿条件の試験環境がない
・DGSやDRBなどの動的試験を実施したい
・規格試験と試験前後の特性評価をまとめて依頼したい

今後も当社では、お客様から寄せられるご要望をもとに、AEC-Q101およびAQG-324に関連する信頼性試験の対応範囲と試験能力を拡充してまいります。

試験条件や対応状況については、対象デバイスの情報やご希望の条件を添えて、お気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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