こんにちは。第二技術部 カスタム技術課の井上です。
今回はパワーデバイスの評価試験の一つである、ダイオードのIFSM試験及び大電流パルス通電試験についてお話しようと思います。車載分野などを含むパワーエレクトロニクス分野においては、使用する半導体の耐久度・信頼性は部品選定における重要なポイントであり、それらを評価する受託試験のニーズも高まってきています。
IFSM(せん頭サージ電流)とは?
IFSMとは、ダイオードの非繰り返しの順方向サージ電流(図 1)の許容値であり、一般的に電源投入時の突入電流に対する耐量の指標となります。印加するサージ電流は商用電源を模して、50 Hz(tp = 10 ms)または60 Hz(tp = 8.3 ms)の正弦半波で定義されます。

IFSMは小信号用のデバイスでは特に気にする必要はありませんが、電源等のパワーライン上で使用される整流ダイオードやショットキーバリアダイオード、MOSFETやIGBTのボディダイオード等では、信頼性の観点で重要なパラメータです。実際に評価を実施する場合は、印加する電流値を少しずつ上げていきデバイスが破壊するポイントを調べることになります。
IFSM試験の評価例
SiC-MOSFETのボディダイオードに対して、当社でIFSM試験を実施した事例を紹介させていただきます。
図 2に、ボディダイオードにピーク電流を制御したサージ電流IF(100 Aと170 A)を印加し、その時のVFとIFをモニタした波形を示しています。通常のIFSM試験では、サージ電流印加後のデバイス故障の有無で判定しますが、当社の試験では印加時の波形測定も承っております。
IF=100 Aのときは測定した波形に異常は観察できず、サージ電流印加後もデバイスは問題なく動作しています。VFのピークが若干後ろにずれていますが、これはジャンクション温度の上昇に伴いVFも上昇していることに起因しています。
IF=170 AのときはVFが明らかに異常であり、サージ電流印加後は故障を確認しました。IF=100 Aと比較してVFは急峻に上昇していることが確認され、急激にジャンクション温度が上昇したことにより故障に至ったと推測されます。

このように、サージ電流印加後のデバイス故障の有無だけでなく、電流印加中の波形を測定することでより詳しい情報を得ることが可能です。
大電流パルス通電試験について
当社では、今回ご紹介したIFSM試験と同様に、試験対象物に対して瞬間的な大電流を印加し耐量を評価する受託サービスも実施しております。正弦半波だけでなく、矩形波等の任意形状の大電流パルス(図 3)を、ダイオードに限らず様々なサンプルに印加することが可能です。
- 電流条件:~1500 A
- 電圧条件:~150 V
- 制御パルス幅:1 ms以下まで可能
- 高温環境でも実施可能
上記以外の条件も対応いたしますので、気軽にご相談ください。

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