EMIとは?デジタル回路でノイズが発生しやすい理由と対策を解説

投稿日:2026年10月08日

みなさん、こんにちは。通信機器設計一課の荷口です。
私自身入社2年目であり、同じような初級エンジニアのみなさんに向けた内容を発信したいと思います。

今回は、EMI(Electromagnetic Interference)の基礎について解説します。
「EMI」という言葉はよく耳にするものの、実際にはどのようなものなのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、EMIとは何かを基本から解説し、製品開発においてどのような影響があるのかを理解していただければと思います。

EMIの基礎知識および電子機器への影響について解説

EMIとは何か

EMI(電磁干渉または電磁妨害)とは、電子機器の動作中に発生する電磁ノイズが周辺機器に望ましくない影響を与える現象を指します。電子機器では、電源回路のスイッチングやデジタル信号の高速な切り替えなどによって、意図しない電磁ノイズが発生することがあります。このノイズが周囲の電子機器や回路に干渉することにより、機器が意図しない動作をすることがあります。そのため、回路設計段階からEMIを考慮する必要があります。

電磁ノイズが機器に与える影響

電磁ノイズは、伝わり方によって大きく「伝導ノイズ(伝導エミッション)」と「放射ノイズ(放射エミッション)」に分けられます。伝導ノイズは配線を介して伝わるノイズ、放射ノイズは空間を介して伝わるノイズです。

伝導ノイズの場合は、ノイズが信号線に重なることで、信号を受け取るICなどに影響を与える場合があります。ノイズによって本来設定したい電圧レベルから変化するため、ICが信号を正しく認識できず、誤動作する可能性があります。また、電源線にノイズが伝わることで、電子部品へ供給される電圧が変動し、回路の安定した動作に影響を与える場合もあります。

放射ノイズの場合は、周囲の配線や回路に影響を与え、配線に不要な電圧や電流が発生することがあります。その結果、回路の誤動作を引き起こす場合があります。また、放射ノイズは無線通信にも影響を与えることがあります。無線アンテナにノイズが入り込むと、本来受信したい無線信号にノイズが重なります。その結果、通信品質が低下し、通信エラーなどにつながる場合があります。

デジタル回路で電磁ノイズが発生する理由

高速エッジと寄生インダクタンスによる電圧変動

デジタル回路では、図1に示すように、信号がHighとLowに高速で切り替わります。このような急峻な信号変化を「高速エッジ」と呼びます。信号の立ち上がり・立ち下がりが急峻になるほど、高い周波数成分を含むため、電磁ノイズが発生しやすくなります。
図2のようなMCUとIC間で通信する場合には注意が必要です。ICには入力容量が存在します。信号がHighからLow、またはLowからHighに切り替わるタイミングで、入力容量の充電・放電が起こり、瞬間的に電流が流れます。また、実際の配線には、図3に示すように寄生インダクタンスが存在します。そのため、電流が急激に変化すると、寄生インダクタンスによって電圧変動が発生します。この関係は、以下の式で表すことができます。

V = L dI/dt

電流の変化が急激であるデジタル回路は、発生する電圧変動が大きくなります。

図1. デジタル回路波形

図2. MCU-IC間通信

図3. 寄生インダクタンスと電圧変動

ループ配線から放射ノイズが発生する仕組み

電流が流れるループ状の配線も、放射ノイズを発生させる要因となります。
ループアンテナと同じように、ループ状の配線に電流が流れると、その周囲には磁界が発生します。特にデジタル回路では、HighとLowの切り替えによって電流が高速に変化するため、配線周辺の磁界も時間的に変化します。時間的に変化する磁界によって電界が生じる関係は、ファラデーの法則で表されます。

∇×E = -∂B/∂t

また、デジタル回路では電圧も急激に変化するため、電界も時間的に変化します。電流と時間的に変化する電界によって磁界が生じる関係は、アンペール・マクスウェルの法則で表されます。

∇×B = μJ + με ∂E/∂t

このように、デジタル回路では高速に変化する電圧や電流によって、配線周辺の電界や磁界も時間的に変化します。配線の形状や長さ、電流ループの大きさなどの条件によっては、これらの電磁界が空間に放射され、放射ノイズとなることがあります。

EMI対策と試験方法

設計段階から考えるEMI対策

回路設計および基板設計では以下が有効とされています。


信号線を必要以上に長くしない
長い配線はインダクタンス成分が大きくなるため、できるだけ短くします。

信号線とリターン電流の経路を意識する
電流が流れるループの面積を小さくし、放射ノイズを抑える。

EMIフィルタを検討する
ノイズが電源線や信号線を介して伝わる場合、フィルタを設けてノイズの伝達を抑える。 対策の一例として、電源線へのフェライトビーズや、ICの電源ピン近くへのバイパスコンデンサの配置などがあります。

筐体やシールドを検討する
放射ノイズが外部へ漏れる可能性がある場合、シールドなどによって放射を抑えます。

信号のエッジを緩やかにする
信号線にダンピング抵抗を挿入するなどして立ち上がりを緩やかにすると、高周波成分を減らせる場合があります。ただし、タイミングマージンへの影響も確認が必要です。

各種EMI試験の紹介

放射エミッション試験

伝導エミッション試験

 

当社では、電波暗室や各種試験機を保有しておりますので、EMI試験でお困りの方はご相談ください。
また、各種設計や受託試験等の技術サービスをご提供しています。

(電気設計受託サービス、基板レイアウト設計受託サービスなど)

当社エンジニアのEMIとの向き合い方

EMI対策では、問題が発生してから対策するのではなく、設計段階からノイズの発生源や電流の経路を考慮しておくことが重要です。当社では、回路設計の段階からどの伝送路でノイズが生じやすいのかを検討し、基板設計では信号線やリターン電流の経路などを考慮しています。

EMI試験で問題が発生した場合には、まずノイズの周波数や発生箇所を確認し、回路図や基板図などの設計情報、および保有しているノウハウなどと照らし合わせて原因を推定します。その後、原因に応じた対策を行い、再度EMI評価を実施します。

EMIは、回路や基板、配線など複数の要因が関係するため、原因を一つずつ切り分けながら対策を進めることが大切です。当社では、設計・評価の両面からEMI対策を支援しています。設計段階でのEMI対策やEMI試験でお困りの際は、当社までお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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