こんにちは。構造設計課の竹森です。
半導体パッケージの開発や実装工程で必ず直面するのが「熱反り(warpage)」の問題です。BGA、FC-BGA、WLP、FOWLP など、どのパッケージでも避けて通れないテーマになっています。熱反りは、歩留まり低下・実装不良・接続信頼性の低下に直結し、試作・評価してからでは開発期間・コストへの影響が大きいため、早期のCAE解析を用いた検証・対策が重要になります。
過去ブログ(温度変化によって発生する熱反り)で説明していますが、本ブログでは、もう少し踏み込んで以下内容で説明します。
- 熱反りが起きる根本原因
- 熱反りの測定方法
- 熱反りの対策
- CAE解析活用による熱反り予測・対策
1. 半導体パッケージの熱反りはなぜ起きるのか(原因)
熱反りの主因は、材料毎のCTE(熱膨張係数:Coefficient of Thermal Expansion)の差と温度変化で発生する熱応力によるものになります。
主な熱反りの原因
(1) 材料間のCTE差(最も大きい要因)
- チップ(シリコン)2.6~3.5 ppm/℃
- モールド樹脂10〜20 ppm/℃
- サブストレート 15〜18 ppm/℃
- LID 21〜25 ppm/℃
これらが温度変化で異なる伸び方をするため、複合構造体として反りが発生します。
(2) 樹脂の硬化収縮
- アンダーフィル硬化(150〜180℃)
- モールド硬化(170〜190℃)
モールド樹脂やアンダーフィルは硬化時に収縮します。この収縮がチップやサブストレートを引っ張り、熱反りを誘発します。
(3) パッケージ構造の非対称性
- チップの位置がパッケージ中心からズレている
- 配線層の銅密度が偏っている
- 異なる材料(チップ、サブストレート、LID、モールド樹脂など)を積層している
構造のアンバランスは、反りを増幅します。
(4) 大型パッケージ化による影響
FC-BGAなどの大型パッケージでは、わずかな材料差でも反りが大きくなりやすいです。
2. 熱反りの測定方法
パッケージの熱反り測定は、主にリフロー温度域でのパッケージ変形量を測定し、実装性やはんだ接合信頼性を評価するために実施します。業界ではJEDECやJEITAの規格に基づいて評価することが一般的です。
主な測定方法
(1)シャドウモアレ法
物体に基準となる格子(スリット)の影を投影し、その影と実際の格子が干渉して発生する「モアレ縞」を解析することで、物体の三次元的な形状や「反り」「変形」を非接触で高精度に測定する光学計測技術です。
(2)プロジェクションモアレ法
光源から格子パターンを対象物に投射し、その反射光をカメラで解析することで、物体の三次元形状を非接触で測定する測定方法です。

(3)DIC法(デジタル画像相関法 / Digital Image Correlation)
カメラで撮影したデジタル画像を解析し、物体の表面がどのように変形したか(変位・ひずみ)を非接触で測定・可視化する手法です。従来のひずみゲージのようにピンポイントで測るのではなく、面全体のひずみ分布をカラーマップとして捉えられます。
パッケージや基板(PCB)など、温度変化によって発生する反りを測定するのは①シャドウモアレ法や②プロジェクションモアレ法が広く採用されています。
3. 熱反りの対策
熱反りは完全にゼロにはできませんが、設計・材料を最適化することで抑制できます。
設計面の対策
(1) パッケージ構造の対称化
- チップ位置を中心に寄せる
- 配線層の銅密度を均一化
- モールド厚を均一にする
→パッケージの構造を左右対称に近づけるほど反りは減少します。
(2) 基板の厚みを増やす
厚い基板は反りにくいが、コストと実装性のトレードオフがあります。
(3) チップ厚の最適化
チップはパッケージの他材料と比較すると、CTE、弾性率が大きく異なるため反りへの影響は大きく、他の材料とのバランスをとる必要があります。
材料面の対策
(4) CTEの近い材料を選ぶ(チップのCTEに近づける)
- 低CTEモールド樹脂
- 低CTEアンダーフィル
- 低CTE基板材料
→ 材料選定は最も効果が大きい。ただし、パッケージと実装するPCB間のCTE差が大きくなると実装信頼性が低くなるため、注意が必要です。
(5) 樹脂の硬化収縮を抑える
硬化収縮率の低い樹脂を使うことで、反りが減ります。
(6) アンダーフィルの塗布量・位置の最適化
アンダーフィルの偏りは反りの大きな原因となります。
これらの対策方法は理解しても、材料それぞれのバランスによって反りは変化するため想定した反りに抑制できるかは予測することが難しく、試作・評価をして判定基準内に反り量が入っていない場合、そこから更に対策することとなり開発期間は延び、試作コスト増となります。
そのため、開発期間の短縮に向けて試作前にCAE解析を活用して予測・対策を行うことが重要になります。
4. CAE解析活用による熱反り予測・対策
CAE解析では、材料・構造を変化させたときの熱反りへの影響が数値や分布図で可視化され、何が要因で熱反りが増加・低減したかが考察できるようになります。当然CAE解析は絶対ではなく、モデルや入力条件によって計算結果は変化しますので目的に応じた条件設定が重要です。特に温度変化から発生する熱応力に関する計算ではどのポイントを応力フリーとして、計算を行うかが重要になります。
例として、BGA(図3)に温度変化(図4)を与えたときのパッケージ端における熱反りを計算します。

常温(25℃)における計算結果を図5、図6に示します。

この結果から以下のことが分かります。
・チップ外で反りが増 ⇒チップは硬いため反りを抑制している効果がある。
・温度低下で凹形(Smile)に反る傾向 ⇒パッケージ上部(モールド樹脂)の熱収縮の影響が強い。
ここでモールド樹脂、サブストレートのCTEをそれぞれ小さくした場合の計算結果を見てみます。

熱反り低減に向けて、3.(4) で低CTEのモールド樹脂の選択を一つの方法としていましたが、パッケージの構造や材料バランスを考慮していなければ、図7に示すように熱反りが逆に増加する結果もあり得るということです。
しかし、CAE解析を事前に行い、反りの要因を分析しているとモールド樹脂の熱収縮の影響が強いことが分析できてモールド樹脂の低CTE化で熱反りを改善できることが分かります。実際にCAE解析での確認結果もモールド樹脂の低CTE化で熱反りが低減することが確認できました。
まとめ
今回はシンプルなパッケージ構造で確認しましたが、実際には複雑な構造や材料は温度依存性を持っていることもあり、更にCAE解析なしでは予測・対策が難しくなりますので、CAE解析を継続活用して知見を積み上げることが重要です。
当社では、半導体パッケージ(半導体パッケージに使用される材料含む)に関するCAE解析の知見を長年積み上げており、熱反り評価から熱反り低減に向けたCAE解析も対応しております。お困りの際は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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