こんにちは。構造設計課の竹森です。
応力解析(強度解析)は聞いたことはあるという方は多いかと思いますが、いつ・どのように使えば良いかを理解して実践されている方は少ないかもしれません。製品開発の現場では、車載機器が受ける振動による共振の評価や、地震を想定した振動の影響、プリント基板・半導体パッケージの実装時に発生する熱応力の検討など、信頼性を確保するために応力解析が重要な役割を果たしています。今回は、事例も含め、応力解析(強度解析)について簡単に説明したいと思います。
応力とは?
まず「応力」とは、物体の内部に生じる力のことです。引っ張ったり、押したり、ねじったりすると、その内部に見えない力が発生します。また、温度が変化すると熱膨張・収縮が発生して、材料によってその大きさは異なり、異なる材料間で差があると力が発生します。これらが限界を超えると、変形や破損につながり製品の品質や信頼性に大きな影響を及ぼします。
壊れる前に知る。応力解析(強度解析)とは?
製品設計において、「この部品は本当に壊れないのか?」という疑問は常に付きまといます。試作して評価して再設計を繰り返すのは時間もコストもかかります。一般的に、設計から量産までの各工程において、後工程で修正が発生すると、手前の工程で修正する場合に比べて、10倍以上の修正コストがかかると言われています。そこで活躍するのが応力解析(強度解析)です。製品に力が加わった時に、どこにどれだけの「応力(ストレス)」が発生するかをコンピュータ上で可視化することで設計段階での妥当性を数値で検証できます。
応力解析(強度解析)の仕組み
応力解析(強度解析)は、一般的には「有限要素法(FEM:Finite Element Method)」を用いて行います。これは、対象物を小さな四角形や三角形の要素に分割し、隣接する要素間(積分点―積分点)をバネで繋いだときに荷重や熱変形で発生する力を数値的に計算(図1 (a))していく手法です。そして、計算された積分点の値(応力)を節点に外挿して対象物表面に発生する応力を計算(図1 (b))します。

図1 有限要素法の計算イメージ(1次低減要素)
このため、積分点が多い要素タイプを使用するか要素を細かくすることで計算精度は上がります。ただし、要素全体を細かくしても、いたずらに計算時間を増やすだけであり、どこに応力が集中するかを見極めて必要な部分の要素を細かくしなければなりません。
どんな時に使うのか?
特に近年では、設計初期段階でのシミュレーション活用(フロントローディング)が増えており、試作前に検証することで設計ミスの早期発見や試作回数の削減を実現しております。また、設計変更で経験的には問題ないであろうという場合においても変更における強度・信頼性への影響を数値で示し、設計の妥当性を確認することが一般的になっています。
- 車のボディや部品の設計(製造誤差、熱応力、振動・衝撃、など)
- 盤など屋外設置機器の設計(耐震強度、搬送強度、など)
- 携帯機器や航空宇宙分野の筐体設計(振動・衝撃、強度、軽量化、など)
- 半導体部品・材料の信頼性確認(実装信頼性、熱反り予測、など)
実際の解析例
たとえば、フレームを組み合わせて計測器が設置されているラック(図2)を想定します。今回はこのラックに対して、地震を想定して横からの加速度(荷重)が与えられた際にどこに応力が集中するか確認するためのシミュレーションを行います。ラックの各パーツを要素分割して、荷重条件や境界条件を設定したシミュレーションモデル(図3)を作成します。その解析結果を応力分布で示したものが図4となります。横からの加速度でラック(フレーム)が変形して、赤い部分ほど応力が集中しており、破損リスクが高いことを示しています。この結果から安全率を考慮して対策要否を検討することになります。(当社では、屋外設置機器等の応力解析を行い、耐震性を検証・対策を行った実績もあります)

応力解析(強度解析)を学ぶ第一歩
最初は妥当なメッシュ分割や条件設定を行うことは難しいため、シンプルな形状(プレートや棒)から解析を始め、
- モデル作成
- 材料設定
- 荷重・固定条件の設定
- 解析実行
- 結果の確認(色で応力を可視化)
という一連の流れを先ずは体験してみてください。実際に応力が集中(どこで壊れそうか)する箇所が目で見てわかるのは、設計上非常に有利です。
まとめ
応力解析(強度解析)は、ものづくりの現場で「失敗を減らす」ための強力なツールです。設計品質の向上、開発コストの削減、製品寿命の予測など、さまざまなメリットがあります。現在はシミュレーション専門技術者ではなく、設計者でも使用できるようなツールがあり手軽に始められる環境が整っています。もし、複雑な構造計算やシミュレーションの導入などで、お悩みの場合は当社にご相談ください。
当社では様々な業界のお客様から解析依頼を受けており、シミュレーションだけでなく実機の評価・分析も行っております。必要の応じ、実使用や製造工程を考慮したより良い設計支援サービスをご提供いたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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