空間伝送型ワイヤレス給電とは?遠距離給電を可能にする次世代給電技術を解説

みなさん、こんにちは。
株式会社 Wave Technology 通信システム技術部の湯川です。

みなさんはワイヤレス給電と聞いたら何を思い浮かべますか?「携帯電話の置くだけ充電器」や「スマートウォッチの充電器」などがすぐに思い浮かぶかもしれません。これらは送電側と受電側が近接している状態でなければ送電ができません。しかし、マイクロ波を使うともっと遠いところに電気を届けることができます。街中にいるだけで携帯電話が充電される未来もそう遠くはないかもしれません。

今回は、2026年現在で研究が盛んに行われている「空間伝送型ワイヤレス給電」についてお話ししようと思います。

ワイヤレス給電とは?基本原理と種類を解説

ワイヤレス給電(Wireless Power Transfer , WPT)とはその呼び名の通り、ケーブル接続なしに無線で各種機器へ電力を送る技術のことです。まずはどのような種類があるのか解説いたします。

空間伝送型ワイヤレス給電と近接接合型の違い

 

方式

動作原理

等価回路

特徴

電磁誘導

近接接合型

距離 : ~数cm
効率 : 高い
媒体 : 磁界
送電電力 : 数W~数kW
複数給電 : △

磁界共鳴

近接接合型

距離 : ~十数cm
効率 : 高い
媒体 : 電磁界(主に磁界)
送電電力 : 数W~数kW
複数給電 : △

電界結合

近接接合型

距離 : ~数mm
効率 : 高い
媒体 : 電界
送電電力 : 数W~数kW
複数給電 : ×

マイクロ波

空間伝送型

距離 : ~数百km
効率 : 低い
媒体 : 電波
送電電力 : 数mW~
複数給電 : 〇

 

ワイヤレス給電は大きく分けて2種類の方式があります。「近接接合型」と「空間伝送型」です。冒頭で挙げた置くだけ充電器などが近接接合型にあたります。こちらについては当社の【固有技術開発】、【ワイヤレス給電の受託設計・評価サービス】 にて紹介しております。

固有技術開発

ワイヤレス給電の受託設計・評価サービス(WPT:無線電力伝送)

近接接合型は送電距離が最大でも~十数cmと近距離であるのに対して、より遠方に送電可能なのが空間伝送型です。こちらはマイクロ波、すなわち電波を用いて送電を行います。しかしその特性上、遠方でも電波は伝わるものの送電できる電力が小さくなってしまうのが弱点です。また、近接接合型に比べて、より高い周波数を使用するため、各部品での減衰も大きくなってしまいます。2026年現在、この弱点を克服するために各国で研究が行われており、日本はその先頭に立っています。

空間伝送型ワイヤレス給電が期待される理由と日本の取り組み

日本では、未来の目指すべき社会像として「Society 5.0(ソサエティ5.0)」というコンセプトを掲げています。これは主導する内閣府を中心に、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済発展と社会課題の解決を両立する人間中心の社会を目指す取り組みです。

この新たな社会の基盤を支える技術として欠かせないのがIoTです。街中のセンサーや建物、家電など、あらゆるモノがインターネットにつながることで、現実世界から膨大なビッグデータを収集し、AIによる高度な分析や最適なサービスの提供が可能になります。

しかし、無数に配置されるIoTデバイスに対して、どのように電力を供給し続けるかが大きな課題となっています。そこで、その解決策として空間伝送型ワイヤレス給電が注目されています。空間伝送型ワイヤレス給電は電池交換の手間や電源ケーブルの制約をなくす画期的なシステムとして期待されています。

この技術の社会実装に向けて、日本は世界に先駆けて空間伝送型ワイヤレス給電に関する法律を整備しました。これにより、電波法に基づく制度化がいち早く進み、ビジネスや公共インフラへの導入に向けた環境が整いつつあります。無線で離れた場所から行う給電システムは、センサーや端末への安定した電力供給を可能にするため、Society 5.0が目指すスマートシティや自動化社会のインフラを支える切り札として、さらなる実用化に向けた研究開発が進められています。

今回はこのあたりで終わりにしたいと思います。
次回はもう少し技術的な部分に踏み込んで、ワイヤレス給電の基本回路構成や送電効率アップのための技術例などを紹介させていただこうと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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