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スミスチャートだけじゃない。インピーダンス整合の可視化に活用できるイミタンスチャート!

こんにちは。通信機器設計一課の加藤です。

当社(WTI)では、無線機器を含む各種RF(高周波)機器やシステムの設計を行っています。その高周波回路設計の際にツールとして使用されるのがスミスチャートとその類似チャート(アドミッタンスやイミタンスチャート)です。スミスチャートの使い方に関しては当社(WTI)サイトに各種資料や動画がありますが、本ブログでは少し別の視点からみてみましょう。

 

 

スミスチャートを用いたインピーダンスの軌跡

スミスチャートやアドミッタンスチャートの定義は別資料に譲りますが、このチャートの上にプロットすると下記のようなメリットがあります。その代表例を図1に示します。

・複素インピーダンスを反射係数(|S11|など)として可視化できる

・更にインピーダンスの変化を可視化して整合設計できる

図1.R, L, Cによるインピーダンス変化の基本

図1のとおり、集中定数で表現される抵抗、インダクタンス、容量にともなうインピーダンス変化は、すべて等リアクタンス円、等レジスタンス円、等サセプタンス円、および等コンダクタンス円の円弧上を移動することにご注意ください。

一方、伝送線路によるインピーダンス変化は図2のようになります。

図2.伝送線路によるインピーダンスの変化例

 

スミスチャートからイミタンスチャートへ

ここまでは、図1のようにスミスチャートを用いてインピーダンスの軌跡を示してきましたが、スミスチャートでは直列R, L, Cの付加に対しては軌跡がわかりやすいですが、並列R, L, Cの場合はアドミッタンス変換を介して考える必要があるため軌跡が直感的にわかりにくい特徴があります。

一方で、アドミッタンスチャートは並列R, L, Cの付加による軌跡の確認に適しています。

実際の回路においては、直列および並列のインピーダンス整合回路が混在することが多いことから、スミスチャートとアドミッタンスチャートの両方を同時に可視化できる方がわかりやすいです。

直列負荷と並列負荷の影響を同時に可視化できるイミタンスチャート

そこで、直列負荷と並列負荷の影響を同時に可視化できるよう作られたのが、図3に示すようなイミタンスチャート(Immittance Chart)となります。

実際のインピーダンス整合においては、Rを用いると電力損失が生じることから、通常はRを可能な限り使用せずにL, Cの組み合わせた整合が多用されます。

このようなL, Cによるインピーダンス整合の場合は、直列L,Cでは等レジスタンス円上を、並列L,Cでは等コンダクタンス円上をインピーダンスが移動することになります。

イミタンスチャートを用いると図3に示すようにスミスチャートとアドミッタンスチャートの円弧交点で「乗り換え」を行って、任意のインピーダンスから50Ωに整合をとる道筋が容易に確認できることがわかります。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イミタンスチャートの便利機能

 

インピーダンス整合における必要なL, Cの大きさ(整合定数)は、計算式を用いれば数値計算することは可能ですが、この計算では複素数を用いる必要があるため式を解くことは非常に困難です。

図3のイミタンスチャートをよく見ると、チャート外周や下部に目盛りが付いていることがわかります。実は、この目盛りを使えばインピーダンス整合における必要な整合定数、電圧定在波比(VSWR)、および入力反射損失(R.L.:Return Loss)も確認できますので、とても便利です。

イミタンスチャートは、50Ω整合への軌跡を可視化するだけでも非常に有益であるに加えて、前述のようにインピーダンス整合における必要な整合定数もわかりやすいことから、現在も多くの高周波回路設計者は整合設計にイミタンスチャートを用いています。

 

以上のように、スミスチャート、アドミッタンスチャート、イミタンスチャートを用いると、インピーダンス整合の手段の可視化が容易になります。詳細は下記サイトもご利用ください。

https://www.wti.jp/contents/category/hint-plus/microwave/index.htm

当社(WTI)では、さらに詳細なスミスチャートの使用法のご説明に関しても対応させていただいております。お困りの際には、一度ご相談ください。

 

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