スナバ回路とは~スナバ回路の必要性と種類、役割を解説~

みなさん、はじめまして。電源設計課の濵田です。

早速ですが、もし今、「スナバ回路とは?」と聞かれたら、みなさんはどう回答しますか?

特にまだ経験が少ない若手技術者の方の中には「回路図でみかけるが・・・」、「サージ対策なのはなんとなく分かっているけど・・・」

などいざ第三者へ説明するには自信がないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、スナバ回路の基本について解説していきたいと思います。

スナバ回路の必要性

スナバ回路の必要性を理解するためには、まず「サージ電圧」とは何かを理解する必要があります。

サージ電圧発生の一因は、配線やトランス、コイルなどが持つ「インダクタンス」にあります。特にスイッチング電源では、配線の寄生インダクタンスやトランスの漏れインダクタンスが問題になることがあります。

スイッチング素子(FETやIGBT、リレーなど)がターンオフして電流遮断すると、電流が急激に変化します。このとき「インダクタンス」は電流を維持しようとするため、電流変化に応じた高い電圧を発生させます。

これがサージ電圧(逆起電力)です。

サージ電圧が大きいと、スイッチング素子の破壊や発熱による信頼性低下の原因になります。また、回路中の寄生インダクタンスや寄生容量によって「リンギング」と呼ばれる高周波の振動が発生することがあります。

この「リンギング」は、放射ノイズや伝導ノイズとなって周辺回路へ悪影響を及ぼし、電磁障害(EMI)を引き起こす原因となります。

近年、小型化・省エネ(高効率化)の傾向から高速スイッチングが可能なパワーデバイスの使用が増加しています。スイッチング速度が速くなると(di/dt)や(dv/dt)が大きくなりますが、その反面スイッチング速度が速くなればなるほどサージ電圧も大きくなりやすいため、サージ電圧を抑制するスナバ回路の重要性が高まっています。

スナバ回路の種類

スナバ回路にはいくつかの種類がありますが、ここでは回路設計で特によく使われる「2つの代表的な回路」を紹介します。

1.   RCスナバ回路

RCスナバ回路は、R(抵抗)とC(コンデンサ)を直列に接続し、抑制したいスイッチング素子やダイオードなどの両端に並列接続する構成が代表的です。主にスイッチング電源回路やインダクタンス(コイル)を含む誘導性負荷の駆動回路で使用されます。

図1はRCスナバ回路(フライバックコンバータ回路)の例です。

フライバックコンバータ回路の二次側整流ダイオードに対して、RCスナバ回路が接続されています。

回路内のFET(Q1)のスイッチングが停止すると、トランス(T1)の「インダクタンス(コイル成分)」によって高い「逆起電力」が発生し、ダイオード(D1)の両端に急激な電圧変化(高いdv/dt)が発生することがあります。

RCスナバ回路は、コンデンサ(C1)でこの急激な電圧変化をなだらかにし、ダイオード(D1)の破壊を防ぐと共に、抵抗(R1)で共振エネルギーを熱に変換して振動「リンギング」を減衰させます。

図1.RCスナバ回路

長所

 ▸構造がシンプル

  :抵抗とコンデンサの2部品だけの構成のため、安価で省スペース。

 ▸極性の制限なし

  :使用部品(R、C)に極性がないため、交流(AC)回路を含む双方向回路にも適用が容易。

 ▸リンギングを抑制

  :抵抗の役割により、「リンギング」を減衰させやすい。

短所

 ▸電力損失が発生する

  :コンデンサの充放電のたびに抵抗でエネルギーが熱として消費される。

 ▸発熱に注意が必要

  :周波数・容量・電圧が大きいほど損失(発熱)が増えるため、大電力・高周波の回路においては、
   部品温度と定格の確認が必要。

 ▸ターンON時の電流スパイクが発生しやすい。

  :スイッチング素子がターンONすると、コンデンサに蓄えられていた電荷が一気に放電される場合が
   あり、瞬間的な大電流(スパイク電流)によって素子にストレスがかかることがある。

2.   RCDスナバ回路

RCDスナバ回路は、R(抵抗)、C(コンデンサ)、D(ダイオード)を組み合わせ、スイッチング素子のターンOFF時に発生するサージエネルギー(トランスの漏れインダクタンスに蓄えられるエネルギー)をダイオード経由でコンデンサへ逃がし、ピーク電圧をクランプする構成です。主にフライバック方式などの電源回路でよく使用されます。

図2はRCDスナバ回路(フライバックコンバータ回路)の例です。

フライバックコンバータ回路の一次側FET(Q1)に対して、RCDスナバ回路が接続されています。

回路内のFET(Q1)のスイッチングがターンOFFした瞬間、発生したサージエネルギーはダイオード(D2)を通じてコンデンサ(C2)へ充電され、FET(Q1)の両端電圧が過大にならないようにクランプされます。

コンデンサ(C2)に蓄えられた電荷は、次にFET(Q1)のスイッチングがターンONになるまで間に抵抗(R2)を通じて放電され、吸収したエネルギーは熱として消費されます。

図2.RCDスナバ回路

長所
 ▸ターンON時の電流スパイクを低減しやすい

  :ダイオードによりコンデンサからスイッチング素子側へ放電経路が制限されるため、
   RCスナバ回路で問題になりやすいコンデンサの放電電流を抑えやすい。

 ▸ピーク電圧のクランプに有効

  :ターンOFF時のサージエネルギーをコンデンサに逃すことで、スイッチング素子への過大な電圧を
   抑制しやすい。

 ▸損失の設計、最適化が容易

  :充電経路と放電経路が分かれているため、RCスナバ回路に比べて損失や発熱を調整しやすい
   利点がある。(※ただし、吸収したエネルギーは最終的には抵抗で熱として消費される)

短所

 ▸部品点数とコストの増加

  :ダイオードが追加されるため、RCスナバ回路に比べて部品コストや実装スペースが増える。

 ▸極性(単一方向)の制限

  :ダイオードの向きにより単方向のクランプ動作となるため、双方向の交流(AC)回路には不向き。
   AC用途では、目的に応じて別構成のスナバ回路やクランプ回路を検討する必要がある。

 ▸残留リンギングに注意が必要

  :ピーク電圧をクランプした後の寄生L/Cによる微小な振動「リンギング」を減衰しきれない場合がある。
   必要に応じてRCスナバ回路の併用や、基板レイアウトの改善による対策が必要となる。

  今回は、代表的な2つのスナバ回路についてご紹介しました。

  どちらもサージ電圧やリンギングの対策として有効な回路ですが、共通して以下の課題があります。

電力損失の発生

  :吸収したエネルギーを最終的に「抵抗の熱」として消費するため、効率が低下する

熱への対策が必要

  :発熱による部品の温度上昇に注意し、抵抗やコンデンサ、ダイオードの定格を確認しなければならない。
   

そのため、実際の設計では「サージ電圧の抑制力」「リンギングの減衰」「効率(熱ロス)」のバランスを考慮し、最適な回路構成と部品(定数)を選定することが大切となります。

まとめ

本ブログでは、サージ電圧を抑制するスナバ回路についてご紹介しました。
若手技術者はもちろん、様々な技術者の参考になれば幸いです。

私たちWTIでは、電源設計から試作・評価・EMI対策まで一貫して対応しており、スナバ回路の定数最適化やノイズ解析など、実機評価を踏まえた設計支援を行っております。
電源設計や評価の内容、方法に関して、ご不明点や課題をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

最後までご一読いただき、誠にありがとうございました。

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