こんにちは。通信機器設計課の岡田です。
前回は周波数逓倍器の設計手法について紹介させていただきましたが、今回は私が対応した通信機器ユニット(高周波アンプ)のEOL業務について紹介させていただきます。
高周波回路基板のEOL対応業務の流れ
改めてEOLというのは、End Of Life の略で電子部品等の生産終了を意味し、代替品への変更が必要になるということです。今回の主な業務内容としては、
① EOL対象部品(今回は高周波アンプ)の代替品選定
② 高周波回路設計シミュレーション
③ 回路図作成
④ 基板レイアウト変更
⑤ 試作
⑥ 評価
という流れで進めていきます。
① EOL対象部品(今回は高周波アンプ)の代替品選定
弊社でのEOL対応では、対象となる高周波アンプだけではなく、周辺の整合部品においても併せてEOL対象可否を調査し代替品の選定を実施します。
これは、お客様におけるEOL対応で、二度手間を防ぐことにもつながり、ご好評をいただいております。
② 高周波回路設計シミュレーション
代替品の選定が終われば高周波シミュレーターを使って、具体的に高周波回路設計シミュレーションを行います。
ここでのポイントは、EOL対象の高周波アンプだけでなく、周辺の整合部品についてもメーカー提供のSパラメーター(※)を使用することが大切です。
ここで、Sパラメーターを使用する理由は、例えば同じ容量値のコンデンサ部品であっても、メーカーや型名によって特性が異なり、高周波での影響がより大きくなるためです。(※)Sパラメーター(Scattering parameter)とは、高周波回路や高周波部品の特性を表すために使用される回路網パラメーターの一つのことで、散乱行列または散乱パラメーターとも呼ばれています。高周波回路や高周波部品の通過電力特性、反射電力特性を表しており、高周波回路設計ではなくてはならないものです。各部品のSパラメーターがメーカーから提供されており、それらを使用することで高周波回路設計シミュレーションの精度が上がります。
③ 回路図作成、④基板レイアウト変更
高周波回路設計シミュレーションが完了すれば、その結果をベースに回路図を作成し、基板レイアウトの変更へと進みます。
ここでのポイントは、現行基板のサイズや外形を変更させないことは基本ですが、高周波の場合はレイアウト自体が特性に大きく影響することから、基板レイアウトにシミュレーション結果をうまく反映させる必要があります。
今回の場合、高周波アンプの変更に伴いRF入出力端子や電源端子のピン配置が変わったこと、また周辺の整合部品点数も増えたこともあり、基板レイアウト変更の難易度が上がってしまいました。
なぜかというと、高周波においては周波数が高くなればなるほど、微妙なRFラインの変更や整合部品の位置変更で、高周波特性が大きく変わってしまうため、基板レイアウトを調整する度に高周波回路設計シミュレーションでの確認が必要になります。
そのため、レイアウト変更においては、シミュレーションとレイアウト検討の繰り返しが発生してしまいました。
設計と実測の比較は重要
結果的には少々時間を要しましたが、基板レイアウトの調整と高周波回路設計シミュレーションを繰り返し行ったこと、また加えて部品サイズの見直しやRFラインとは別の電源ライン等の配線見直しで、基板サイズや外形を変更することなく完了させることができ、「⑤試作」への準備を進めているところです。
今回は私が対応した通信機器ユニット(高周波アンプ)のEOL業務の中でも、再設計の部分をメインに紹介させていただきました。
今後の流れとしては今回の結果をベースに試作を行い、その試作品の評価へと進みます。設計段階での高周波回路設計シミュレーションは、高周波回路の各種パラメーターを決定する重要な工程ですが、シミュレーション結果と試作品の実測結果が合わないことも多いため、設計段階で調整に必要な回路やレイアウトを設けています。
実測において、シミュレーション結果と実測が合わなかった際には、回路調整の作業も発生します。どこに調整できる部分を設けるか、及びそれらを使った調整には、高周波設計の経験と実績が重要となります。このように弊社(WTI)では各種EOL対応を請け負っており、高周波の分野においては高周波アンプ等、高周波部品の代替品調査から高周波回路設計(設計変更)、試作、評価まで幅広く対応させていただいております。
高周波でお困りの際はぜひ一度(二度三度)お気軽にご相談ください。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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