みなさん、こんにちは。
評価解析技術課の花井です。
当社では、chemSHERPA、IMDSといった環境調査スキームへの対応や、環境関連法規に関する環境負荷物質調査の代行業務を行っております。
今回はCMRT・EMRTを用いた紛争鉱物調査についてお話ししたいと思います。
紛争鉱物調査とは
紛争鉱物調査とは、製品や部品に使用されている鉱物の原産国や製錬所などを確認し、紛争や人権侵害などへの加担を避け、責任ある鉱物調達につなげるための調査で、米国やEUでは、紛争鉱物や責任ある鉱物調達に関する規制が設けられています。

紛争鉱物調査では、紛争や人権侵害などのリスクが高い「対象国」や「CAHRA(紛争影響地域・高リスク地域)」から鉱物が調達されていないかなどを米国のResponsible Minerals Initiative(RMI)が作成したCMRT・EMRTを用いて確認します。(CMRT・EMRTはRMIのホームページからダウンロードが可能です)
「米国やEUの法律の直接的な対象ではないので、紛争鉱物調査は必要ないのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、社会的信用や企業価値の低下リスクへの懸念から「紛争や人権侵害に関与する企業とは取引しない」とする企業が年々増加しており、紛争鉱物調査への対応の重要性が高まっています。
紛争鉱物調査の最近の動向(EMRTの物質追加)
まず、CMRT・EMRTができた背景について簡単に説明します。
CMRTは、紛争地域からの鉱物調達や人権侵害などの問題を背景に、錫・タンタル・タングステン・金(3TG)について、サプライチェーン上のリスクを確認するために作られました。
しかし、3TG以外にも児童労働・人権侵害などのリスクが高い鉱物が注目されるようになり、責任ある鉱物調達そのものへの国際的な要求の高まりもあり2021年にコバルト・マイカを対象としたEMRTが発行されました。
その後、電気自動車(EV)や蓄電池などの普及に伴う「EUバッテリー規則(EU Battery Regulation)」の施行や、さまざまな製品に欠かせない重要な鉱物といった視点から、2025年に発行されたEMRT 2.0では、銅・天然黒鉛・リチウム・ニッケルが新たに追加されました。
今後も、国際的な動きや規制などを背景に、EMRTの対象となる鉱物も少しずつ広がることが予想されます。
CMRT・EMRTを用いた紛争鉱物調査
紛争鉱物調査は、一般的に以下の4ステップで進めます。
① 調査の対象製品・部品を決める
② サプライヤーへ調査を依頼する
③ 回答を回収し、内容を確認する
④ 調査結果を整理する
「具体的にどのように進めればよいのか?」という方も多いと思われますので、
①~④のステップについてもう少し詳しく説明します。
①調査の対象製品・部品を決める
まずは、どの製品・部品を紛争鉱物調査の対象とするのかを決めます。
自社の取り組みとして紛争鉱物調査を実施する場合は、取り扱っているすべての製品・部品についてCMRT・EMRTによる調査を行うのか、あるいは対象となる鉱物が使用されている可能性のある製品・部品に絞って調査するのかなど、あらかじめ調査範囲を明確にします。

すべての製品・部品を対象にすると、調査対象となるサプライヤーの数も多くなり、調査にかかる負担が大きくなる場合があります。そのため、取引量や製品の重要度などを考慮して優先順位を設定し、優先度の高い製品・部品やサプライヤーから調査を実施する方法もあります。
一度にすべてを調査することが難しい場合は、調査対象を段階的に広げていくなど、自社の状況に合わせて調査範囲を設定することも重要です。
また、取引先から紛争鉱物調査の依頼を受けた場合は、CMRT・EMRTのどちらの提出を求められているのか、どの製品・部品が調査対象なのか、回答期限はいつなのかなど、取引先から指定された調査対象や調査範囲を確認することが重要です。
②サプライヤーへ調査を依頼する
調査対象となる製品・部品とサプライヤーが決まったら、サプライヤーへCMRT・EMRTの回答を依頼します。
CMRT・EMRTを依頼する際は、対象となる製品・部品、回答期限、回答方法などを明確に伝えることが大切です。
また、サプライヤーによっては、自社だけでは製品に使用されている鉱物の原産国や製錬所を把握できず、さらに上流のサプライヤーへ確認する必要があります。そのため、CMRT・EMRTの回答には一定の時間がかかる場合があります。
調査の目的や回答方法を分かりやすく伝え、余裕を持った回答期限を設定することで、CMRT・EMRTの回収をスムーズに進めやすくなります。
③回答を回収し、内容を確認する
サプライヤーからCMRT・EMRTを回収したら、回答内容に不備や矛盾がないかを確認します。
CMRT・EMRTの対象となる鉱物について各質問に適切に回答されているか、製錬所の情報が記載されているかなどを確認します。
CMRT・EMRTのフォーマットには、「Checker」シートという、回答に不備がある場合にチェックしてくれるシートがあります。
もちろん、こちらも確認必須ですが、CMRT・EMRTの確認では、「Checker」シートにエラーがないことだけを確認すればよいわけではありません。
例えば、CMRT質問3「サプライチェーン内の製錬所のいずれかが、対象国(Covered Countries)を3TGの原産国としているか」に対し、「Yes」と回答した場合は、備考欄にその回答を裏付ける具体的な情報を記載することが求められます(CID番号など)。
CMRTの質問3がYesなのに備考欄に記載が無い場合は、可能な限りサプライヤーへ「Yes」と回答した根拠の確認をする必要があります。
このように、「Checker」シートでエラーが出ていない場合でも、回答内容に矛盾がないか、回答を裏付ける情報が記載されているかなど、回答全体を確認することが重要です。
④調査結果をまとめる
紛争鉱物調査は、CMRT・EMRTを回収して終わりではありません!
最後に、回収したCMRT・EMRTの回答を整理し、自社の調査結果としてまとめていきます。
まず、CMRT・EMRTのDeclarationシートにある各質問への回答を整理します。
各質問について、サプライヤーから回収した回答を総括し、自社として「Yes」「No」「Unknown」のうちどの回答になるのかを判断していきます。
もう一つ重要なのが、製錬所情報の「名寄せ」です。
複数のサプライヤーからCMRT・EMRTを回収すると、同じ製錬所が複数の回答に記載されていることがあります。また、同じ製錬所であっても、サプライヤーによって名称の表記が異なる場合があります。
そこで、回収したCMRT・EMRTに記載されている製錬所の情報を整理し、同一の製錬所を一つにまとめる「名寄せ」を行います。
例えば、A社のCMRTには「〇〇 Smelter」、B社のCMRTには「〇〇 Smelting Co., Ltd.」と記載されていた場合、それらが同一の製錬所なのかを確認し、同一であれば一つの製錬所として整理します。
名寄せを行うことで、複数のCMRT・EMRTに分散していた製錬所の情報を集約でき、自社のサプライチェーンにどのような製錬所が含まれているのかを把握しやすくなります。
まとめた調査結果は、自社の責任ある鉱物調達の取り組みに活かすとともに、お客様への紛争鉱物調査の回答として使用することになります。
最後に
サプライヤーへの依頼、回答内容のチェック、製錬所の名寄せ、調査結果の取りまとめまで、紛争鉱物調査は意外とやることが多く、手間もかかります。
「CMRT・EMRTを回収したものの、どうチェックすればいいかわからない」「回答をどう整理・集計すればいいかわからない」とお困りの方も多いのではないでしょうか。
紛争鉱物調査でお悩みの際には、お気軽に当社にお声かけください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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