みなさん、こんにちは。電源設計三課の則信です。
近年、MPPT制御に関するお問い合わせが増えております。
本ブログでは、MPPT制御を理解するための前提知識として、
太陽光パネルの発電原理とI-V特性を中心に、回路設計で押さえておきたい
ポイントを解説します。
太陽光パネルは、住宅の屋根やメガソーラーなどで身近になった発電デバイスです。
一方、回路設計の視点で見ると、一般的な安定化DC電源とは異なり、接続する負荷や日射量、温度などによって出力電圧・電流が変化するという特徴があります。
そのため、太陽光パネルを電源として利用する回路を検討する場合は、発電原理だけでなく、I-V特性やP-V特性、開放電圧、短絡電流、最大電力点といった基本特性を理解しておくことが重要です。
太陽光パネルの発電原理とは?基本の仕組みを確認
太陽電池セルが発電する仕組み
太陽光パネルを構成する基本単位が「太陽電池セル」です。一般的な結晶シリコン系の太陽電池セルは、p型半導体とn型半導体によるPN接合を利用して構成されています。
p型半導体とn型半導体を接合すると、接合部には空乏層が形成され、内部電界が生じます。太陽電池セルに光が入射すると、半導体内部で電子と正孔が対になって生成されます。生成された電子と正孔はPN接合部の内部電界によってそれぞれ異なる方向へ分離され、外部回路に電流を取り出すことができます。
図1に、光が当たっていない状態と光が当たった状態における太陽電池セルの発電イメージを示します。

図1 PN接合を利用した太陽電池セルの発電イメージ
このように、太陽電池セルは光エネルギーを電気エネルギーへ変換します。本ブログでは半導体物理の詳細には踏み込まず、回路設計で重要となるI-V特性やP-V特性などの電気的な特性を説明します。
太陽電池セルと太陽光パネルの関係
太陽電池セル1枚で得られる電圧や電流には限りがあるため、実際の太陽光パネルでは複数のセルを組み合わせて必要な出力を得ます。一般に、セルを直列に接続すると電圧を高くでき、並列に接続すると取り出せる電流を増やすことができます。
このように複数のセルを組み合わせたものがモジュールとなり、用途に応じた電圧・電力の太陽光パネルとして使用されます。

図2 太陽電池セルと太陽光パネルの構成イメージ
太陽光パネルは一般的なDC電源と何が違う?
一般的な安定化DC電源は、仕様で定められた範囲内であれば、負荷が変化しても所定の出力電圧を保つように制御されています。一方、太陽光パネルは、接続する負荷の状態によって出力電圧と出力電流の組み合わせが変化します。
この電圧と電流の関係を表したものが「I-V特性」です。太陽光パネルを回路へ接続するときは、定格電圧だけを見るのではなく、どの動作点で使用するのかを考える必要があります。
太陽光パネルのI-V特性とは?電圧と電流の関係
開放電圧Vocとは
太陽光パネルの出力端子を無負荷にした状態で測定する電圧を「開放電圧(Voc:Open Circuit Voltage)」と呼びます。
後段にDC/DCコンバータなどを接続する場合、通常動作時の電圧だけでなく、想定する環境条件での開放電圧が後段回路の最大入力電圧定格を超えないかを確認することが重要となります。
短絡電流Iscとは
太陽光パネルの出力端子を短絡したときに流れる電流を「短絡電流(Isc:Short Circuit Current)」と呼びます。
後段にDC/DCコンバータなどを接続する場合、通常動作時の電流だけでなく、想定する環境条件での短絡電流も確認し、入力部品や配線、コネクタ、保護素子などの許容電流に問題がないか確認することが重要となります。
負荷によって太陽光パネルの動作点は変化する
太陽光パネルに接続する負荷が変わると、パネルの出力電圧と出力電流も変化します。この関係をグラフにしたものがI-V特性です。
回路設計では、太陽光パネルの定格値を単独で見るのではなく、実際に接続する負荷や電力変換回路を含めて、I-V特性上のどの付近で動作するのかを確認することがポイントとなります。

図3 太陽光パネルのI-V特性
太陽光パネルから取り出せる電力と最大電力点
電力(P)は、電圧(V)と電流(I)の積で表されます。
P = V × I
開放状態では電流がほぼ0 A、短絡状態では電圧がほぼ0 Vであるため、どちらの状態でも出力電力はほぼ0 Wとなります。一方、その中間に電圧と電流の積が最も大きくなる動作点があります。
最大電力点(MPP)とは
太陽光パネルの出力電力が最大となる動作点を「最大電力点(MPP:Maximum Power Point)」と呼びます。I-V特性に加えて電圧と電力の関係をP-V特性として見ると、電力がピークとなる点として確認できます。
太陽光パネルから効率よく電力を取り出すためには、この最大電力点付近でパネルを動作させることが重要となります。

図4 太陽光パネルのI-V特性とP-V特性
太陽光パネルのI-V特性は日射量や温度で変わる
太陽光パネルのI-V特性は一定ではありません。日射量やセル温度によって、同じ太陽光パネルであっても出力特性が変化します。そのため、最大電力点の位置も日射量やセル温度によって変化します。
日射量によるI-V特性の変化
日射量が変化すると、太陽光パネルの出力電流は変化します。日射量が小さくなると出力電流は低下します。一方、開放電圧も変化しますが、電流と比べると変化は小さい傾向があります。
時間帯、天気、建物や構造物による影など、実際の使用環境では日射条件が変化するため、設計時には一定の日射量だけを前提にしないことが大切です。

図5 日射量の違いによる太陽光パネルのI-V特性(模式図)
温度によるI-V特性の変化
太陽光パネルの電気特性はセル温度によっても変化します。一般にセル温度が高くなると開放電圧など電圧側の特性が低下する傾向があり、反対に低温時には開放電圧が高くなる傾向があります。
このため、通常動作時だけでなく、想定するセル温度の範囲も含めて後段回路の入力電圧条件を確認する必要があります。

図6 セル温度の違いによる太陽光パネルのI-V特性(模式図)
太陽光パネルを使った回路設計で注意したいポイント
ここまでの特性を踏まえると、太陽光パネルを電源として使用する回路では、パネルの定格値だけで判断せず、実際の使用条件と後段回路の仕様を合わせて確認することが重要となります。
パネルの定格電力だけで判断しない
例えば「100 Wの太陽光パネル」と記載されていても、実際に常に100 Wを取り出せるとは限りません。定格値は所定の測定条件で示された値であり、実際の出力は日射量、セル温度、接続する負荷などによって変化します。
必要な電力を確保できるかを検討する際には、パネルの定格電力だけでなく、想定する使用環境やシステム全体の損失も含めて考える必要があります。
開放電圧Vocと回路の入力定格を確認する
太陽光パネルの後段にDC/DCコンバータや電源ICを接続する場合、入力電圧の定格を超えないことを確認する必要があります。特に開放時や低温時には動作時より電圧が高くなる可能性があるため、想定条件を含めて余裕を持った設計が求められます。
「通常はこの電圧だから大丈夫」と考えるのではなく、起こり得る条件を洗い出して確認することが、回路トラブルを未然に防ぐための重要なポイントとなります。
実際の使用環境まで考慮する
屋外で使用する太陽光パネルでは、日射量、外気温、影などが時間とともに変化します。さらに、後段回路の起動条件や負荷の変化によっても動作点が変わるため、実機で想定される環境条件を整理しておくことが大切です。
入力に太陽光パネルを使用した電源回路では、起動時や環境変化を含む使用条件、後段回路の入力条件などを整理したうえで、部品単体の定格値などを考慮して設計を行うことが重要となります。
太陽光パネルから効率よく電力を取り出すMPPT制御
ここまで説明したように、太陽光パネルには出力電力が最大となる最大電力点があり、その位置は日射量やセル温度などによって変化します。
そこで、太陽光パネルの動作点を最大電力点に追従させる制御を「MPPT(Maximum Power Point Tracking:最大電力点追従)制御」と呼びます。
MPPT制御を利用することで、環境条件が変化する中でも太陽光パネルから効率よく電力を取り出すことが可能となります。
太陽光パネルを使った電源回路設計で押さえておきたい基本特性
今回は、太陽光パネルの発電原理とI-V特性について、回路設計の視点から基本を整理しました。
<まとめ>
・太陽光パネルは、負荷によって出力電圧と出力電流が変化する
・開放電圧Voc、短絡電流Isc、I-V特性を確認することが重要
・電圧と電流の積が最大となる最大電力点(MPP)が存在する
・I-V特性や最大電力点の位置は、日射量やセル温度などの環境条件で変化する
・後段回路を設計する際は、定格値だけでなく実際の使用条件まで考慮する
電源設計三課が次回担当するブログでは、変化する最大電力点にどのように追従するのか、「MPPT制御」の仕組みについて解説する予定です。
当社では、太陽光パネルを用いた電源回路についても、日射量や温度などによる出力変化を考慮し、仕様検討から回路設計・評価まで対応しています。電源設計でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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